漢方について相談できる病院検索 漢方について相談できる病院検索

漢方を活かす食養生 No.5 免疫のバランスを整える

公開日:2020.04.06
カテゴリー:漢方ニュース
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 免疫は生体を守るために大切な機能ですが、時に過剰状態となることがあります。免疫細胞のバランスが崩れると、がんやアレルギー性疾患が問題となることがあります。今回は、がんで手術後の患者さんの食養生の話です。

 56歳女性が、偶然右の乳房にしこりを発見しました。当院を受診した後、すぐに総合病院の乳腺外科で手術を行いました。術後はホルモン療法を受けましたが、食事の相談をしたいと、再び来院されました。

 漢方薬は、当帰や川芎といった女性ホルモン系の生薬を含む補中益気湯(ほちゅうえっきとう) を処方しました。

 免疫の調整には酸味の発酵食品、苦味のきのこ類、甘味のファイトケミカル、辛味のミネラルやビタミン類、塩味の微量元素が必要です。

 いわゆる玄米菜食は、免疫細胞の材料となるアミノ酸が不足するため要注意です。

 ファイトケミカルとは野菜や植物成分由来の抗酸化作用をもつポリフェノールなどの成分を含む食品の総称です。

 ポリフェノールを含む食品には、ブルーベリー、ぶどう、大豆、セロリ、パセリ、ピーマン、緑茶、果実類、カカオ、ブロッコリー、玉ねぎ、柑橘類があります。カロテノイドを含むものには、にんじんやかぼちゃ、トマト、みかん、ほうれん草、スイカ、とうもろこしがあります。それ以外に、だいこんやわさび、キャベツにもファイトケミカルが含まれています。

 そして、女性ホルモン系の刺激になるのは、大豆やごぼう、さつまいも、黒豆、いんげん豆、枝豆、さやえんどう、菊の花、山茱萸(さんしゅゆ)、青しそ、タアサイ、黄にら、もやし、アボカド、ザクロ、山椒、オオバコ、どくだみなどがあります。

 主食は加圧鍋で調理した玄米食がおすすめです。

玄米の薬膳がゆ

材料
玄米 1合
1L
長芋 150g
スプラウト 適量
めんつゆ 適量
作り方
  1. 玄米は洗って一晩水に浸し、1Lの水でゆっくり柔らかくなるまで煮る。
  2. 長芋はすりおろし、スプラウトはサッとゆでてきざみ、ご飯に添える。
  3. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 また、以下のサラダを紹介しました。

とろとろ土佐酢サラダ

材料
おくら 100g
モロヘイヤ 100g
なめこ 150g
スプラウト 適量
◇土佐酢
 しょうゆ 50ml
 みりん 50ml
 酢 50ml
 水 50ml
 かつお節 10g
作り方
  1. かつお節に熱湯をかけ出汁をとる。みりんはさっと煮切って、しょうゆ、酢と一緒にする。
  2. 野菜はそれぞれゆで、おくらは小口切り、モロヘイヤも細かく刻む。スプラウトもざく切り、なめこはサッと熱湯に通し、器に盛る。
  3. 食べるときに、全体を混ぜ合わせ、土佐酢をかける。
  4. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 スプラウトに含まれるスルフォラファンは、体の抗酸化作用を高めることが知られています。ちなみに、スプラウトとはえんどう豆やかいわれ、ブロッコリーなど、発芽直後の野菜の新芽のことを指します。さらに、副食としておすすめしたいのが肉。その中でも鶏肉、特にささみが免疫を強くします。ただし外国産の鶏肉には女性ホルモンの使用が疑われるケースがあるので、できれば国内産を用いましょう。魚ではアントシアニンを多く含む鮭や鯛がおすすめです。

 これらを3か月食べていただいたところ、満足いく免疫状態になり、再発もなくホルモン療法も終了となりました。術後5年経過されましたが再発もなく元気で過ごされています。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.109-110.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeとしての意見・見解を示すものではありません。
記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。掲載されている記事や画像等の無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。