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六君子湯に胃腸障害以外の症状を改善させる可能性

[漢方ニュース] 2018/09/18

第11回日本在宅薬学会学術大会で発表

 六君子湯(りっくんしとう) は一般に、体力が中程度以下の方の食欲不振や胃もたれなどの胃腸障害を改善すると言われています。しかし、なかには六君子湯の複合的な作用で胃腸障害だけでなく、その他のさまざまな症状が改善するケースもあると言われています。

 ファーマ・プラス薬局の薬剤師・小黒佳代子先生は、六君子湯の処方を提案して、とても効果があった患者さんでの経験から、六君子湯は、腹圧が虚弱なBMI 18程度の痩せ型、病気の影響で体重が低下したために食事が摂りにくくなったが患者さんの、日常生活動作(ADL)の改善に有効な可能性があることを第11回日本在宅薬学会学術大会で発表しました。

ケース1:脳梗塞発症後、排尿障害や食欲低下を訴えていた高齢男性

 小黒先生が六君子湯の処方を提案した例として、まず紹介したのが居宅型有料老人ホームに入居していた90歳代の男性Aさんの事例です。Aさんは脳梗塞を発症後、後遺症として右半身の麻痺(右片麻痺)が残り、普段の生活では車椅子を使用していました。さらに排尿障害や食欲低下を訴えていました。当初、薬は高血圧治療薬も含め4種類を服用していました。

 食欲不振のため、経腸栄養剤が開始されましたが、Aさんは服用せず、食欲低下が認知症による意欲低下の可能性があると判断した医師が、認知症治療薬を追加。さらにAさんが高齢者特有の背が丸くなる円背だったことから、その影響で胃酸が逆流する逆流性食道炎の可能性があると見立て、それまで服用していた胃腸薬と血液の凝固作用を抑制する抗血小板薬を、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬と別の抗血小板薬を1つにした配合剤に切り替えました。

 ただ、Aさん本人が漢方薬を希望したことから小黒先生が六君子湯の服用を提案。実際に服用を開始すると、2週間で食欲は改善しました。しかも、この頃から血圧値が安定してきたため、降圧薬(カルシウム拮抗薬)の服用を中止することができました。

 また、Aさんは排尿障害のため尿道を広げることための小さな風船が付いたカテーテル(バルーンカテーテル)という管を尿道口から膀胱まで通し、人工的に排尿を行っていました。しかし、六君子湯の服用後は本人の自発的な尿意が認められたため、念のため排尿障害の治療薬を追加したうえでバルーンカテーテルを抜いたところ、自力排尿が可能になりました。この結果、家族と外食ができるまで回復したそうです。

ケース2:脳梗塞発症後、便秘や排尿障害を訴えていた高齢男性

 また、小黒先生は脳梗塞の既往がある高血圧症の80歳代男性(Bさん)にも六君子湯の処方提案も行いました。Bさんはやはり脳梗塞発症後に左半身の麻痺という後遺症を抱え、その他に便秘と排尿障害の症状がありました。

 入所していたケアハウスでは車椅子生活で、ハウス内の食堂まで自力で行くことができず、自室のベッドで食事をしていました。ただ、食事が摂れないときもあり、その際には栄養剤の輸液を受けており、その他に抗血小板薬、降圧薬2種類、心臓病治療薬、消炎鎮痛薬、消炎鎮痛薬による胃炎を防止するための胃炎治療薬、便秘薬の合計7種類を服用していました。

 Bさんには、便秘の改善のため漢方薬の麻子仁丸(ましにんがん) を追加し、便秘が改善。栄養補給の輸液は行ったまま、六君子湯の服用を提案しました。その後、徐々に食事が取れるようになり、血圧も安定し、特に痛みの訴えもないことから、降圧薬2種類と消炎鎮痛薬、胃炎治療薬の服用を中止し、六君子湯の服用開始から4か月後には着替えも自分で行えるまでに改善しました。

 2人はともに小柄で円背が強く、体重が40kg 強の痩せ型で、声は小さく、皮膚は乾燥気味、食欲不振・胃腸障害・排尿障害がありました。そうしたことから六君子湯はこうした共通項を持つ患者さんで有効である可能性が考えられたとしています。(村上和巳)

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