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下半身の痛みで眠れない高齢者に「疎経活血湯」が有効

[漢方ニュース] 2018/07/30

血のめぐりが悪い「お血」や水が停滞した「水滞」も改善

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者では足腰の痛みを訴える人は2~3割にのぼると報告されています。実際、高齢者では足腰の痛みや便秘を訴える患者さんが多く、このため消炎鎮痛薬や便秘薬が漫然と投与されていることが少なくありません。

 こうした中、さかい薬局グループの薬剤師・坂井美千子さんは、下半身の痛みが睡眠に悪影響を及ぼしている高齢者に、関節痛や腰痛など主に下半身の痛みの改善に用いられる疎経活血湯(そけいかっけつとう) の処方を提案。その結果から、こうした症状に疎経活血湯が有効であり、高齢者で問題になりがちな多剤併用(ポリファーマシー)の改善にも資する可能性があるとの見解を第11回日本在宅薬学会で発表しました。

 疎経活血湯は芍薬(しゃくやく)、 地黄(じおう)、 川芎(せんきゅう)、 蒼朮(そうじゅつ)、 当帰(とうき)、 桃仁(とうにん)、 茯苓(ぶくりょう)、威霊仙(いれいせん)、羌活(きょうかつ)、 牛膝(ごしつ)、 陳皮(ちんぴ)、 防已(ぼうい)、 防風(ぼうふう)、 竜胆(りゅうたん)、甘草(かんぞう)、 白芷(びゃくし)、 生姜(しょうきょう)という17種類の生薬で構成されています。

 血(けつ:いわゆる血液)、水(すい:血液以外の体液)の巡りなどを改善するといわれる疎経活血湯は、血に関しては、主に血が不足している「血虚」に適した漢方薬と理解されていますが、血のめぐりが悪い「お血」にも改善効果があると報告されています。さらに水が停滞した「水滞」も改善すると言われています。具体的には体力は中程度の患者での関節痛、腰痛、神経痛、筋肉痛、とりわけ腰から脚などの下半身の痛みに用いられることが多い漢方薬です。

睡眠薬や便秘薬が必要なくなった患者さんも

 坂井さんは、65歳以上で脊柱管狭窄症、腰痛、こむらがえりなどで下肢の痛みを訴え、睡眠が障害されている患者80人に疎経活血湯の処方を提案しました。80人の内訳は男性25人(65~90歳)、女性55人(65~93歳)でした。

 疎経活血湯の服用回数は、夜間に限らず下肢筋肉の痙攣に伴う痛みや腰痛がある場合には1回2.5gを1日2~3回、夕方以降に痛みがある場合は夕方以降に1日1回2.5gを1週間服用としました。また、服用した患者さんには水分摂取量は1日1000ml以下にしない、冷えを防ぐよう注意を促しました。実際の服用回数別割合は「1日3回食前服用」が76%、「1日2回朝夕食前服用」が3%、「1日1回夕食前服用」が5%、「1日1回就寝前服用」が16%でした。

 痛みの評価はFace Rating Scale (FRS)と呼ばれる、人の表情イラストで痛みのレベルを0(痛みなし)~5(想像できる最強の痛み)の6段階で表現したものを患者が選ぶことで判定。FRSレベルが1(わずかに痛い)以下となったことを症状改善と定義しました。疎経活血湯の処方前のFRSレベルは全員が3(さらに痛い)以上でした。

服用開始から1週間で症状が改善し、服用終了とした患者さんが41%、服用開始1週間後から3カ月後まで症状改善し、服用終了とした患者さんが29%、症状は改善したものの服薬継続が必要だった患者さんが29%、効果がなかった患者さんが1%という結果になりました。

 こむらがえりや筋肉の痙攣には、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) が処方されることもあります。ただ、芍薬甘草湯の場合、甘草により心臓などに悪影響を及ぼす低カリウム血症の副作用が起きることがあります。この点は特に高齢者では注意が必要と言われています。疎経活血湯にも甘草は含まれていますが、芍薬甘草湯と比べて含有量も少ないためか、今回疎経活血湯を服用した患者さんでは低カリウム血症になったケースはありませんでした。

 また、坂井さんは「夜中に足がつるため睡眠薬を服用していた患者さんで、疎経活血湯の服用で睡眠薬がいらなくなったほか、副次的に排便コントロールが良くなり便秘薬が削減できたケースもあった」と述べ、高齢者で服用薬剤数の削減にも有効だったことも説明しました。(村上和巳)

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