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思春期の月経関連トラブルと漢方によるアプローチのメリット

公開日:2024.01.15
カテゴリー:病気と漢方

近年、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、月経困難症など、月経に関するトラブルについての社会の認知度は上がりつつあります。また、思春期の月経に関する心身のトラブルに関しても着目されはじめています。今回は特に保護者の方に気をつけていただきたい観点から、思春期を対象とした月経関連トラブルの傾向と対策について東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授の小川真里子先生にお話を伺いました。

近年着目されつつある思春期の月経に関する不調

「栄養状態の改善に伴う心身の発達などから初経が低年齢化していることは、かなり昔から指摘されてきました。これは戦後から長く続いている傾向です。実際、月経関連の不調で当院を受診される患者さんをみても、かつては30代が中心でしたが、昨今は思春期から更年期まで偏りなく、9、10歳くらいで初経を迎えたお子様も少なくありません(小川先生、以下同じ)」

月経の開始とともにPMSやPMDD、月経困難症などの月経に伴う心身の不調はもちろん、それ以外のリスクも高まる可能性があります。

「例えば、子宮内膜症のほか、出血による貧血などのリスクが高まる可能性があります。また、女性の場合、初経から閉経の期間のうつ病リスクは男性よりも高いという報告もあります1)。また心身の不調が、学業やスポーツ、その他の行事も含め、学校生活に支障をきたすケースもみられます」

思春期の月経トラブルの原因と特徴

月経に関するトラブルは、世代を問わず、基本的に、女性ホルモンとストレスの関与が大きいと考えられています。

「思春期の場合、他の年代のようにホルモンバランスが崩れるのではなく、初経に伴う女性ホルモン分泌による『それまでになかったホルモン変動の始まり』が影響していると考えられます。また、塾通いや習いごと、家族や友人との人間関係ほか、さまざまなストレスが存在します」

思春期の月経に関するトラブルについて、小川先生は次のように指摘します。

「月経前のイライラや不安、落ち込みといった症状は思春期にも起こりえます。月経困難症を併発するケースも多い印象です。
また、思春期の月経に関するトラブルについての報告は少ないものの、女子高校生を対象とした国内外の調査で中等度~重度のPMS、またはPMDDが疑われる患者さんは、成人と比較して有意に多かったという報告2)もあります」

保護者ができること~子供の様子の観察と婦人科受診への理解~

治療の前に、「まずは保護者の方に対して」と小川先生は次のように話します。
「第一に、PMSや月経困難症など月経に伴う心身の不調は治療により改善可能であり、また、産婦人科は決して怖い場所ではないことをご理解いただきたいと思います。そして、親御様が考える以上にお子様がつらい状態で、学校生活に支障をきたしている可能性もあります。そのため、親御様の的確な視点も重要です。例えば、学校を早退する、いつもより朝起きるのが遅い、といった行動に気づいたら、怠けているのではと思う前に、まずはそこに周期性があるかを調べることが大切です。行動の時期を記録することで月経との関連性が確認でき、早期の治療につながる可能性も高まります」

月経関連のトラブルに漢方薬を用いるメリットと漢方処方の使い分け

「ピルなどのホルモン治療に抵抗がある場合、漢方薬は治療の導入に非常に使いやすいといえます。また、月経関連のトラブルに限りませんが、漢方の『不調は心身のバランスの乱れから生じ、それを整えることで改善する』という本質的な考え方を、身をもって理解してもらえるよい機会にもなります」

小川先生いわく、そもそも思春期に月経関連のトラブルを訴える患者さんの多くは痩せ型で華奢という共通した傾向があるそうです。
「そうした背景から、冷えや月経不順、月経困難症を伴うことが多く、漢方の第一選択薬には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用いることが多いです。イライラや気分の落ち込みなどメンタルの不安定な状態が強い方には抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)が効くケースも多数みられます」

症状が限られている場合は、特定の効果を発揮しやすい処方を用いることもあるといいます。

「例えば、とにかくむくみをなんとかしたいという場合、特に水のトラブルに効果的な五苓散(ごれいさん)を用いることがあります。また、月経時、ホルモンバランスの影響で頭痛になる人も多いのですが、そうしたケースでは片頭痛などによく用いられる呉茱萸湯(ごしゅゆとう)を用いることも多いです」

飲みづらいという人も少なくない漢方薬ですが、思春期の若い女性の場合はどうなのでしょう。

「症状のないときまで毎日、1日3回の服用は、思春期のお子様に限らず、大人でも大変な方が少なくないでしょう。そこで、飲み忘れてしまった場合などは1日2回でも構いませんし、飲むタイミングもあまりこだわらなくていいでしょう。
ほかにも、抑肝散加陳皮半夏や五苓散など即効性が高い処方については、症状があるときだけの頓服でも構わないと伝えています」

思春期の月経トラブルに対するセルフケア

普段の生活で実践できる月経関連のトラブル改善について、特に思春期で重要な点をうかがいました。

「全年齢的にいえることですが、お腹や腰を温め、冷やさないことは重要です。他の年代に比べ、ファッションとして肌を露出する傾向が強い思春期には特に強調しておきたいですね。
また、イライラした際にストレス解消と称して甘いものをたくさん食べてしまう方も少なくないようですが、それは逆効果です。急激な血糖の変動により、さらにイライラが増してしまうので、控えたほうがいいでしょう」

今、思春期を過ごしている子どもたちは、親の世代とは違ったストレスにさらされています。悩みを抱えている子どもと話し合い、理解を示し、月経トラブルにともに向き合うことが求められています。

(取材・文 岩井浩)

参考
  1. Deecher, D,et al. Psychoneuroendocrinology. 2008; 33(1): 3-17
  2. 武田卓. HORM FRONT GYNECOL 2020; 27(3): 187-190

小川真里子(おがわ まりこ)先生
東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授 
福島県立医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部附属病院での研修を経て、医学博士取得。2007年 東京歯科大学市川総合病院産婦人科 助教、2011年同大学講師、2015年より現職。日本産科婦人科学会 専門医・指導医、日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医・指導医、日本女性心身医学会 認定医師、日本心身医学会 身心医療専門医、日本臨床細胞学会 細胞診専門医・教育研修指導医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、母体保護法 指定医など。

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