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漢方薬はダイエットや肥満解消に役立つ? 肥満・高血圧外来の医師が解説

公開日:2023.05.24
カテゴリー:病気と漢方

「漢方 ダイエット」でネット検索すれば、瞬時に数百万件もの情報がヒットする昨今、店頭のみならず通販などで手軽に購入できるダイエット関連の漢方薬も増えています。そんな今の時代にこそ、漢方とダイエットの正しい関係を再認識しておきたいものです。
今回は、出雲漢方クリニック院長の宮本信宏先生に、クリニック内の『肥満・高血圧外来』における肥満症への取り組みから漢方薬での肥満解消の考え方についてお話を伺いました。

常に不調を感じていた…自らの肥満体験が漢方治療のきっかけに

宮本先生は10年ほど前、過度の肥満で、体重が115キロあったそうです。

「太っていた当時は、常に咳が止まらず、倦怠感に慢性胃腸炎に頭痛と、例えるなら毎日インフルエンザが治りきらないような状態でした」

あまりの体調の悪さに、肥満解消を決意。出雲の痩せ神様とも呼ばれる斐川中央クリニック院長の下手公一先生に師事し、漢方の勉強を始めたといいます。

「太っていて体調がよい人を、私は見たことがありません。そして、そうした体調不良は、肥満の解消とともに治まっていくものです。例えば痩せることで高血圧症が改善されたり、逆に、漢方薬などで体調不良が改善することで、肥満が解消されたりするケースも多く見られます」

『肥満は万病のもと』という言葉があるように、肥満はまさに、さまざまな不調の原因となります。単に痩せることを目的とするではなく、肥満による体調不良の治療を行いたいと考えた宮本先生が、外来名を『肥満外来』でなく、『肥満・高血圧外来』とした理由はそこにあります。

基本的な肥満解消の漢方処方は大きく3つに分けられる

宮本先生の『肥満・高血圧外来』では、肥満の解消に留まらず、その根本にある不調の解消を本質とします。訪れる患者は大きく2タイプに分類され、主に処方される漢方薬は次のようになります。

脾気虚(虚証)※1 タイプ

①五苓散(ごれいさん)+補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
→補中益気湯が効かない場合、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)に変更することも。

瘀血(実証)※2 タイプ

②便秘あり:桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
③便秘なし:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
→むくみがある場合は五苓散を併用、もしくは桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん)などを処方し様子をみる。

※1 心身に必要なエネルギー(気)が不足しているタイプ。主な自覚症状は、疲れやすい、胃腸が弱い、水分代謝が悪くむくみやすい(水滞)、など。
※2 体に不要なもの(瘀血)が排出されないため、血流などの巡りが悪いタイプ。主な自覚症状は、肩こり、腰痛、便秘、あざが治りにくい、顔色が浅黒い、など。

「虚証タイプは、体の水分の分布を適切にしてむくみを解消する五苓散と、自律神経を調整して興奮を鎮め、異常に亢進した食欲(要するに明らかな食べ過ぎ)を正常にする働きもあるとされる補中益気湯を併用します。実証タイプの場合は、便秘の有無が処方のポイントのひとつとなります」

患者さんのタイプの判断については、「舌診(舌の状態から病因などを考察する東洋医学の診断方法)に重きを置いています」

肥満・高血圧外来での運動療法の考え方

とはいえ、漢方薬を飲んでいるだけで痩せるわけではありません。同外来では漢方処方とともに、糖質制限の指導を行っています。

「目安としては、普段食べているご飯や麺類、パン、お菓子などの糖質を半分にして減らした分、肉類や魚類を取っていただく。当外来での指導は、基本的にこれだけです。あまり厳密なものではありません。もっと糖質を減らしたいという方にはご自身で調整できるよう指導しています」

一方、肥満解消といえば運動を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、「痩せるということに関していえば、運動はさほど重視していません」

「もちろん運動はしたほうがよいですが、ふだんから運動習慣のない人に急に運動するよう指導しても続かないことがほとんどです。そして、運動による微量なカロリー消費よりも、むくみ・便秘の解消や糖質制限のほうが効果を実感できると思います。さらに言えば、痩せてくると運動し始める人が増えます。体が動くようになって、運動したくなるのでしょうね」

肥満解消で期待できるメリットとは?

同外来の患者さんの肥満解消状況について、宮本先生は「9割方は痩せていっている」と話します。

「正確な数字は集計中ですが、当外来に通い続けている多くの方は、漢方で体調を整えることで痩せていっています。糖質制限の指導を守れる方がより痩せていきますね」

体重は思うように減らないものの、悩まされていた頭痛や肩こり、腰痛、高血圧などの症状は改善しているため、通い続けているという人もいるそうです。

「ただし、美容・ダイエット目的で、痩せていて不調もない方には効果は期待できない旨をお伝えしています。太ってはいないけれど心身に不調がある方の場合は、当クリニックの一般漢方外来での診療で改善するケースもあります」

肥満解消のメリットは肉体的な症状のみにとどまりません。

「先日、当外来の患者さんから『先生、痩せたら、同窓会が楽しみになりました』と言われて、まさにそうですねと。私自身、体重が100キロ超えているときは人前に出たくなかったですから」

ダイエット目的の漢方薬は購入前に医師・薬剤師に相談を

巷に氾濫するダイエットを銘打った漢方薬の数々。中にはパッと見ただけでは漢方薬だとわからない、サプリメントのような名称のものも多くあります。「飲むだけで痩せる」というイメージを持ってしまう人も多いのではないでしょうか。こうした状況に対し、宮本先生は次のように話します。

「漢方だと知らなかった、と話す方は私の患者さんにもおられます。そもそも購入者が肥満症に当たらないケースというのは論外ですが、肥満症の改善を謳う医薬品の中には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)といった、気をつけるべき副作用が比較的多いとされる漢方薬を主成分とした商品も存在します。体質に合っているかわからない漢方薬を自己判断で飲むのは、効果が出ない可能性が高いだけでなく、健康を害する可能性もあるといえます」

続けて、宮本先生は次のようにも指摘します。

「実際、肥満症の改善を謳う、つまりダイエット目的で市販されている漢方薬を含んだ市販の医薬品というものを私自身は飲んだことがなく、また、それによって痩せたという話を自分の患者さんから聞いたこともありません。少なくともひとつ言えるのは、漢方に限らず、自分に合っていない薬、効果が出ない薬は飲まなくてよいということでしょう。飲んで何らかの効果が得られているのであればいいかもしれませんが、効果がないのに漫然と続けることはおすすめできません。繰り返しになりますが、漢方薬を飲むだけで痩せるわけではないということです」

(取材:岩井浩)

自己判断による過度の糖質制限は、体調不良の原因となる可能性があります。糖質制限を行う際は、医師・薬剤師の指示に従うようにしてください。

宮本信宏(みやもと のぶひろ)先生
出雲漢方クリニック 院長、島根大学医学部漢方医学 臨床教授

高知医科大学医学部卒業後、京都大学胸部疾患研究所にて胸部外科研修医に。京都大学呼吸器外科、ミネソタ州 Mayo Clinic、ミシガン大学、島根大学医学部循環器・呼吸器外科講座助教、同大医学部附属病院呼吸器外科 副診療科長。同院外科漢方外来開設後、安来第一病院 呼吸器外科部長等を経て現職。日本外科学会 認定外科専門医、日本胸部外科学会 胸部外科認定医、日本東洋医学会 島根県部会長、日本漢方医学教育協議会 幹事。

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