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母親の卵巣がんの手術後、身体症状に神経質になってしまった母娘 前編

公開日:2012.01.10

公立のがん専門病院待合室で・・・

 公立のがん専門病院待合室で、不安な気持ちで待っている鮫島さん親子。

鮫島さん(母)
「検査結果、大丈夫かなぁ?」
夏子さん(娘)
「前の人、なかなか出てこないね。」
鮫島さん
「どうしよう、結果が悪かったら・・・」

 卵巣の悪性腫瘍で手術を受けたのが、1年前。鮫島さんは娘の受験で自分の体のことなどにかまっている時間がなくて、時々お腹が痛かったが病院へ診察を受けには行かなかった。無事に都内の大学へ進学が決まった後、ホッとしたのか?ドッと疲れが出て寝込んでしまった。往診に来てくれた医師が下腹部のしこりに気付き、すぐに地域の中核病院で検査を受けた。診断は卵巣癌で手術が必要とのことであった。そして、この病院を紹介され、手術、化学療法、と治療を受けた。主治医からは、抗がん剤による化学療法を術後しばらく続けると説明され、今は、定期的に外来へ通院している。今回の外来は、先月行った化学療法の効果判定のため。診察前に行った血液検査の結果を聞きに娘と二人で再発がないか、不安な気持ちでやって来た。

夏子さん
「お母さん、大丈夫だよ。心配ないって。」
鮫島さん
「もし検査結果が悪かったら、また、あの治療が始まるのかなぁ」
夏子さん
「大丈夫だって。お母さん、頑張ったんだもん。きっといい結果が出ているよ」
鮫島さん
「そうだといいんだけれど」

 待合室で待つ二人の前に、大きな診察の順番を示す液晶テレビがあり、そこに二人の診察順番を示す番号が点滅した。

鮫島さん
「先生、どうでした?」
主治医
「あぁ、結果ね。大丈夫でしたから、年末年始はご自宅でゆっくりしてください」
鮫島さん
「ありがとうございます。」
主治医
「はい、では、また。来年の外来を予約しておきます」
夏子さん
「あの・・・先生」
主治医
「ほかに何か?」
鮫島さん
「いえ、ありがとうございます」
主治医
「はい、今回の検査結果は、大丈夫でしたから安心してくださいね。それでは、いつものお薬を出しておきます。次回も、血液検査を前もってしてから診察させていただきますので。それでは、お元気で」
鮫島親子
「ありがとうございました」

 娘に手を引かれながら、診察室を出てきた母親。
 診察を受ける前よりも、不安そうな母親の顔をのぞき込みながら娘は安心させるように、

夏子さん
「ほら、よかったじゃない、お母さん。これでゆっくりとお正月が迎えられるね」
鮫島さん
「うぅん、そうだね・・・」
夏子さん
「あれ、何か心配なの?先生も大丈夫だっておっしゃってくれたじゃない?」
鮫島さん
「そうなんだけれど・・・」
夏子さん
「お母さん、心配ないよ。ね?大丈夫だって」
鮫島さん
「そうじゃないのよ」
夏子さん
「何が?」
鮫島さん
「だって、あの先生、一度も私の顔、診なかったのよ。ずっと、コンピューターの方を見ていただけで。検査結果も大丈夫だとはおっしゃったけれど、何が大丈夫なのか?説明、してくれなかったじゃない。」

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今津嘉宏(いまづ・よしひろ)先生
芝大門 いまづクリニック 院長
1988年藤田保健衛生大学医学部 卒業、1991年慶應義塾大学医学部外科 助手、2005年恩賜財団東京都済生会中央病院外科 副医長、2009年慶應義塾大学医学部漢方医学センター 助教、2011年北里大学薬学部 非常勤講師、薬学教育センター社会薬学部門 講座研究員、2011年麻布ミューズクリニック 院長、2013年芝大門 いまづクリニック 院長

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