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【大建中湯】慢性便秘症に伴う腹部膨満感、腹痛の軽減/論文の意義

[堀内朗先生]

西洋医学では対処法に乏しく困っている領域

刺激性下剤を使いにくい時に、慢性便秘症に伴う腹部膨満感や腹痛を軽減する
―大建中湯(だいけんちゅうとう)

 慢性便秘症では、大腸の粘膜や神経の集まりに作用して排便を促す大腸刺激性下剤がよく使われますが、腹痛や悪心などの副作用があり、これによって起こる患者さんのQOL(生活の質)の低下が、しばしば問題になってきました。堀内朗先生(昭和伊南総合病院消化器病センター長)らは、大建中湯を大腸刺激性下剤に併用することで、副作用なく、より効果的に慢性便秘症の腹部症状を改善できることを、2010年の米国消化器病週間(DDW)で報告し、注目されました。この研究成果は、消化器領域の国際的な専門誌『Gastroenterology Research』2010年8月号に掲載されています。

背景:慢性便秘症の治療では、排便回数を増やすことだけでなく、お腹の張りや痛みなどの自覚症状を改善することが重要

避けられない下剤の副作用、依存 「便秘」を全く経験したことのない方は少ないでしょう。しかし、「そういえば、この数日間排便していないな」というだけなら、心配ありません。今まで思い出さなかったということは、お腹が張って困るとか痛いということがなかったわけですね。

 実は、「便秘症」には明確な医学的定義はありません。一般には、通常1日に1回ある排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔が不規則となって、便の水分含有量が低下している状態(硬便)をさします。しかし、排便習慣には個人差が大きいので、かならずしも排便回数が少ない、便が硬いからといって病気とはいえないのです。

 では、何が「治療が必要な病気としての便秘」の基準になるのでしょうか。それは、排便が困難であるとか、腹部膨満感や腹痛があるといった症状を伴うことなのです。これらの症状の程度はさまざまですが、日常生活に支障をきたすほど強い場合もあります。そのため、治療ではそれらの症状を改善することが重要になります。なお、消化器疾患やその他の全身疾患が原因で起こっている便秘症では、まず原因となっている病気の治療が必要です。

 慢性便秘症の治療では下剤、特に大腸刺激性下剤がよく使われます。しかし、これらの薬剤には悪心や腹痛・腹部けいれんなどの副作用も少なくなく、また長期に使用することで、大腸がその働きを下剤に依存する状態(腸弛緩症候群)になってしまうことなどが問題となっています。そのため、従来の下剤とは異なる新たな治療薬が模索されてきました。

 『大建中湯』は、「人参(にんじん)」「山椒(さんしょう)」「乾姜(かんきょう)」を構成成分としており、麦芽糖(マルトース)も含まれています。もともと、冷えが原因の腹痛などに対して使われてきました。「中」は、体の中心部である胃腸を表し、大建中湯には、胃腸を大きく建立し丈夫にするという意味があります。これまでの基礎研究から、セロトニン受容体を介したコリン作動性神経系を活性化することで、消化管運動を促進することなどが知られていました。また、すでに小児やパーキンソン病患者の便秘症を改善することが報告されていたため、堀内先生たちのグループは慢性便秘症の患者さんでも有効ではないかと考えたのです。検討の結果、大腸刺激性下剤に大建中湯を併用することで、腹部症状を改善することが明らかになりました。また副作用の報告はありませんでした。

 なお、他の研究(川崎医科大学・眞鍋紀明先生ら)では、健康な人に大建中湯を投与して、消化管内での内容物の排出速度を検討したところ、大建中湯が「胃から腸への排出」には影響を与えずに、「腸での排出」を速めることがわかりました。便秘症の中には、「腸での排出」速度が遅れることが原因となっているタイプもあり、そのような便秘症では大建中湯が特に有効なことも期待できます。

2010/11/25

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