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生理前の強いイライラを抑えるために来院した20代女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2014/03/12

生理前の強いイライラを抑えるために来院した20代女性

 「生理前になるとイライラする」という20代の女性が来院した。普段から仕事のストレスでイライラしやすいが、生理の前には特にイライラして困ると言う。“イライラする”というキーワードに対して処方する漢方薬の第一選択は抑肝散(よくかんさん) にしているので、この患者さんにも抑肝散のエキス剤を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。2週間後には「生理前のイライラはもとより、普段のイライラも落ち着いている」とのことであった。
 抑肝散とは読んで字の如く、肝(癇癪)を抑する薬である。神経が高ぶって眠れないときに内服すると眠りやすくなったり、認知症のために怒りっぽくなった人が内服すると落ち着いたりする。また、子供の夜泣きを減らすために処方されたりもする。子供の夜泣きについては自分で処方した経験がないので効果の程はわからないが、教科書には「母親とともに内服させると夜泣きに効果がある」というような内容の記載がある。どうやら母親のイライラが子供に伝わって子供が夜泣きするという考えらしい。このように抑肝散とはイライラを抑えてくれる薬の代表のような薬である。
 今回の患者さんは、抑肝散で普段からあるイライラも生理前のイライラも落ち着いたため、しばらく内服を継続することとした。先日この患者さんが再診したとき、「この前風邪をひいた時に、他の症状は良くなったのに咳だけが残ったので市販の麦門冬湯(ばくもんどうとう) を買って飲んでみたら、イライラがとっても良いんです」と言って、麦門冬湯の処方を希望された。本人が希望する漢方薬は、よほどの医学的な理由がなければ処方するようにしているので、この患者さんにも麦門冬湯のエキス剤を1回3グラム1日3回毎食前に処方した。似た作用の漢方薬を複数同時に処方すると、それぞれの効果が弱くなる可能性があるため抑肝散は中止した。麦門冬湯を処方するときのキーワードは“乾いた咳”とか“喉が乾燥して貼り付く感じがして咳が出る”などである。実際、麦門冬湯に含まれている生薬の代表は麦門冬であり、これには体に潤いを与える作用がある。今回の患者さんも咳が残っていたために麦門冬湯を内服し、咳に対しての効果も感じたようである。また、麦門冬に半夏という生薬が組合わさると、気持ちを落ち着かせる作用が現れると説明している本もある。麦門冬湯には、この半夏も含まれている。どうやら麦門冬湯には気持ちを落ち着かせる効果も期待できるようである。今まで麦門冬湯を“喉を潤す咳止め”という意識でしか使用していなかったが、今回の患者さんから大きなことを学ばせてもらった。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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