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「漢方の得意な病気」って?~大切なのは「気・血・水」のバランス

公開日:2015.11.11
カテゴリー:漢方ニュース

どれか1つでも過不足があると不調や病気のもとに


東京女子医科大学・東洋医学研究所の
伊藤隆先生

 10月26日に、日本漢方生薬製剤協会主催の第18回市民公開漢方セミナーが開催されました。今回のテーマは「漢方の得意な病気」。漢方薬の治療と西洋医学の長所を生かした診療経験が豊富な、東京女子医科大学・東洋医学研究所の伊藤隆先生から、漢方薬はどんな病気を治すのに有効か、また西洋医学と併用する際の注意点などのお話がありました。その様子をレポートします。

 伊藤先生は、まず、漢方診療の指標の中でも基本となる「気・血・水」を整えることの重要性を指摘しました。「気」は「元気」や「気力」という言葉で表現されるように目には見えない生命エネルギーのことで、「血」は全身に栄養分を届ける作用のある血液とその働きのこと、「水」は汗や鼻水、リンパ液など血液以外の水分とその働きを指します。漢方ではこの3つの要素が過不足なくバランスよく循環していることを健康な状態とみなしています。逆にこのうちのどれかが不足していたり、滞ったりすると不調や病気などが起こってくると考えられています。

 「気のバランスが悪い場合は、『気虚』(ききょ)と言って気の量が不足している場合と『気滞』(きたい)と言って体のある部分に気が停滞している場合、『気逆』(きぎゃく)と言って気の流れが逆行していている場合があります。
 気虚の場合は疲れやすかったり、食欲不振、冷えなどの症状が、気滞の場合はイライラ、情緒不安定、お腹にガスが溜まるなど、そして気逆の場合はのぼせや動悸などの症状が出ます。年齢とともに気は弱くなってきますので、気を補う補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や六君子湯(りっくんしとう)、などの漢方薬を用います」と伊藤先生。
 「また『血虚』といって血が不足している場合には、顔色が悪くなったり、疲れやすくなる、貧血、冷えなどの症状があり、体を温める作用のある四物湯(しもつとう)を用います。さらに、気と血の両方が不足している場合は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)や人参養栄湯(にんじんようえいとう)を用います」

西洋薬と上手に組み合わせることで症状が改善する場合も

 次に「血流改善」についての話がありました。
 「『スラスラと流れる血がスムースに流れなくなった』いわゆる血行不良の状態を“お血(おけつ)”といいます。女性に多く見られるものですが、年齢を重ねるごとに男性にも増えてきます。便秘がなく、冷えのぼせがあるお血の人には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が効果的」とのことで、“お血”に使う三大処方として桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を挙げました。

 伊藤先生は最後に「日本は、西洋医学と漢方医学を両立させている唯一の国。漢方薬のエビデンスが蓄積されてきたことによって、各診療科で多くの漢方薬が処方されるようになってきました。漢方医学では身体全体を診るので、症状がたくさんあっても薬の種類は少なくて済む場合があります。自分の症状の原因を考えて、西洋薬とうまく組み合わせて活用していくことが大事です」と漢方薬と上手に付き合う秘訣を伝授しました。

(市民公開講座の模様は こちらでも

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