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アトピー性皮膚炎に知っておきたい桂枝茯苓丸~アトピー性皮膚炎による慢性期苔蘚化に対する桂枝茯苓丸の有効性~

公開日:2014.04.11
カテゴリー:漢方ニュース

富山大学大学院 医学薬学研究部皮膚科学教授
清水忠道氏
(ISRN DERMATOLOGY. 2012, 2012, p.1-6.)
第112回日本皮膚科学会総会イブニングセミナー
〔平成25年6月14日(金) 18:10~19:10〕より

 アトピー性皮膚炎の大きな特徴は、「強いかゆみ」と「治りにくい湿疹」です。かゆみは相当につらく、かきむしって皮膚に傷ができたり出血したりもします。皮膚をかくと、炎症がますますひどくなり、さらにかゆみが強くなり悪循環を繰り返します。そして慢性化すると、皮膚のきめが粗く硬くなる、「苔癬化(たいせんか)」が起こります。これもアトピー性皮膚炎には特徴的な症状です。
 アトピー性皮膚炎の病態には遺伝的、免疫学的要因や環境因子などが関与していると考えられ、標準的治療法としてステロイド外用剤や抗ヒスタミン薬などが用いられます。
 苔癬化が起こり慢性化しますと、治療に抵抗を示す例が多く患者のQOLや日常生活に多大な障害を起こすため皮膚科医が治療に難渋する疾患のひとつであります。

 今回、清水忠道先生(富山大学大学院医学薬学研究部皮膚科学教授)は、桂枝茯苓丸がアトピー性皮膚炎、特に苔蘚化した慢性期のアトピー性皮膚炎に有効であることを基礎薬理学的および臨床研究により明らかにし、国際的な専門誌「ISRN DERMATOLOGY. 2012, 2012, p.1-6.」に発表し、第112回日本皮膚科学会総会イブニングセミナーにて報告しました。

 アトピー性皮膚炎に用いられる漢方薬は,駆瘀血(くおけつ)と清熱(せいねつ)効果を有する処方が使用されます。
 桂枝茯苓丸は、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、桃仁(トウニン)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンヒ)の5種類の生薬から構成される漢方薬で、漢方的には駆瘀血(くおけつ)と清熱(せいねつ)効果を有する代表的な方剤であります。
 西洋医学的には、末梢血管拡張作用により血流障害を改善し、抗炎症・抗アレルギー作用により皮膚の炎症をしずめ、のぼせや冷えを改善し、また肌の状態を改善する効果が期待できるということになります。
 アトピー性皮膚炎は、血管内皮細胞から炎症性サイトカインが分泌されることによる血管の炎症が原因と考えられています。その病状は、「強いかゆみ」と「治りにくい湿疹」であります。炎症が慢性化すると、皮膚のきめが粗く硬くなる、「苔癬化(たいせんか)」が起こります。これらのかゆみ、紅皮疹や苔癬化は漢方的な瘀血の病変と考えられます。
 そこで、本研究では、アトピー性皮膚炎患者における疾患活動性に対する桂枝茯苓丸の有効性について検討しました。42名のアトピー性皮膚炎患者に対して、既に服用していたステロイド剤や抗ヒスタミン剤に加え、桂枝茯苓丸を4~6週間投与し,投与前後で重症度の指標であるSCORADインデックスとVASスコアを計測しその効果を評価しました。
 桂枝茯苓丸の投与により、SCORADインデックスとVASスコアは有意に減少しました。(P < 0.01) また、SCORADインデックスを用いた改善率による総合評価は、42例に対し43%に中等度以上の改善、76%に軽度改善以上の良好な改善効果が得られました。
 さらに桂枝茯苓丸の9~67週間の長期投与が可能であった4例は、高い苔蘚化スコアが顕著に改善を示し全例が有効であり抗ヒスタミン薬が不要になった患者も認められております。
 桂枝茯苓丸は、アトピー性皮膚炎、特に苔蘚化した慢性期のアトピー性皮膚炎に有効であり、その治療効果はかなり期待できると考えられます。

VAS(visual analog scale)
主観的な掻痒の程度の指標。100%が最も痒みが強い時、0%がまったく痒みがない時として、何%かをみる。主観に頼るため一般的な指標になりにくいが、痒みの改善度をみるのには非常に有用である。また、掻痒だけでなく、掻痒によって生じる睡眠障害の程度もこの指標が利用される。

SCORAD(SCORing Atopic Dermatitis)
発疹の範囲、紅斑・苔癬化などの発疹の多様性、VAS(掻痒・睡眠障害)を数値化し点数にし、重症度を評価する。

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