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くにやクリニック 小泉久仁弥院長

公開日:2014.08.27
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

長引く風邪が漢方で治り「面白さ」を発見

 私の家は祖父も父も医師だったので、自分も小さいころから当たり前のように医師になるものと考えていました。一時、エンジニアに憧れ、無線技術士とか通信士といった仕事をしたいと考えたこともありましたが、現実的に将来を考えるようになったときには、迷わず医師という職業を選びました。
 漢方に興味を持ったのは、自分の風邪が漢方で治ったことがきっかけでした。研修医のとき、ずっと風邪が治らなくて、病院にきた製薬会社の人に教えてもらって小柴胡湯を飲んだら、つらい症状がすっと治まったのです。それで「漢方って面白いな」と感じたのが最初でした。
 公立岩瀬病院の薬局長だった方が漢方に詳しくて、最初はその人にいろいろ教わり、さまざまな漢方の勉強会にも参加しました。その後、北里研究所東洋医学総合研究所で本格的に漢方を学びました。
 クリニックを開業して14年目となりますが、以前勤務していた病院時代から続けて通ってくれている患者さんや、漢方を扱っているクリニックのためか、若い女性の患者さんが比較的多くいらっしゃいます。花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギーの病気のほか、最近は、疲れやすいとか、ちょっとしたことで体調を崩しやすいといった「虚弱」をどうにかしたいと受診される方もいます。また、妊娠中や授乳中の女性も多いですね。女性の方が、自分の体に入れる「薬」というものに敏感なのかもしれません。
 地元のお年寄りの中には、ふつうの内科だと思っていらっしゃる方もいます。ここ大塚は、都内でもだいぶ高齢化が目立ちます。町自体が古いこともあり、けっこう強い横のつながりを感じますね。患者さん同士が知り合いだったり、全く関係ないと思っていた人が知り合いだったりして、よくクリニックの待合室でも「あら、あなたもここに来てたの?」「もう何年も通ってるのよ」「会ったの初めてね!」なんて会話が聞こえます。
 在宅医療もおこなっていて、週に2、3回は診療後の夕方から、脳梗塞の後遺症やパーキンソン病などで動けない方のお宅に往診に行っています。

漢方的な見方でつらい症状をとる

 治療をするときに心がけていることは、何より「患者さんのつらい症状をとる」こと。それが一番の治療目的だと考えています。西洋医学と漢方の治療では患者さんの見方も病気の診断の仕方も異なります。漢方では自覚症状をとくに重視するため、どこにどんな症状があるか、どんなときに症状が起こるかなどを、事前に書いていただいた問診票をもとに、詳しく問診します。その後、血圧を測り、舌の視診、脈やおなかの触診をおこないます。これは患者さんの体の状態を知り、漢方による治療の方法を決めるために欠かせない診察なので、どんな病気の患者さんにも必ずおこないます。
 漢方を用いた治療の一番優れた点は、「小回りが利くこと」だと私自身は考えています。西洋医学では、つらい症状があっても原因がわからず病名がつけられなかったり、薬の量を患者さんに合わせて調整することが難しいこともあります。でも漢方では、病名がつかなくても治療することができますし、患者さんの体に合わせて薬の種類や量を細かく調整することができるのです。
 例えば、ご高齢の方で、ある病気の症状として下痢が止まらないという方が受診しました。本来なら西洋薬の下痢止めが一番効くのですが、それでも止まらない。診察をして、気のめぐりが悪くて下痢をしているとの診断で香蘇散という薬を処方したら、下痢がすぐ止まりました。香蘇散はもともと下痢止めではなく、風邪などに処方する「気のめぐり」をよくする薬。その患者さんにはよく効いて、結果的に症状が治まりました。このように漢方では、直接症状に効く薬というより、体質や体の状態を改善する薬を使い、それによって症状が治まることがあります。

ときに漢方治療の難しさを実感することも

 「漢方は天然なものだから安全」とお考えの患者さんもいるようです。確かに、植物の葉や種、根など、見た目は身近な感じで体にやさしそう、と考えてしまうのも頷けます。でも、キノコの中には、食べたら死んでしまう毒キノコもありますよね。天然のものでも使い方を誤れば体によくない作用を及ぼすものもあります。漢方薬も薬ですから、副作用があらわれることもあります。それと「効果が一定ではない」という難しさもありますね。体質の違いもありますし、同じ病気、同じ症状でも、ある人に効いた薬がほかの人にも効くとは限らない。個人差が大きいのです。
 よく「患者さんが先生」という言葉を聞きますが、本当だと思います。患者さんに教えていただくことはたくさんあります。長く飲み続けることで体質が改善された症例を目の当たりにしたり、「この症状でこの薬が効くのか」と驚いたり、20年経っても新たな発見があります。また、クリニックは臨床研修協力施設のため、よく研修医が来るのですが、その先生方に教えることで頭の中が整理されることも多いですね。人に話すためには自分の中できちんと要点がまとまっていることが必要なので、教えることで自分の勉強にもなっていると思います。

両腕と両足にウエイトをつけて往診に

 私自身も健康のために、六味丸や桂枝茯苓丸などの漢方薬を飲んでいます。ときどき自分で調子を見ながら薬をやめたり、変更したりしています。一度やめたら調子が悪くなったので、自分にはこの薬が合っているみたいです。漢方薬は自分でも飲んで「いい」と思えるからこそ、患者さんにも処方することができるのだと思います。
 健康に良いといえば、私はいつも、両腕に500g、両足首に2?のウエイトをつけています。腕は、五十肩になってしまったのでその解消のためにつけたのですが、足の方は、いつも往診のときに私の歩くのが早くてついていけないと研修の先生に言われたので、ちょっとゆっくり歩こうと思ってつけました。つけて歩くようになったら体調もいいのでそのまま続けており、今では診療中はずっとつけっぱなしです。おかげですっかり慣れてしまい、結局歩くのが速くてついていけないと言われています(笑)。
 趣味は、本を読むことと、コンピュータのセッティング。クリニックの電子カルテもレセプトコンピュータも全部自分で入れました。簡単にできるものはつまらないので、難しくて手間のかかるものが好きです。今はネットで探せば大抵のセッティング方法は書いてありますので、時間をかけてひとつずつやっていくと、ほぼできますよ。
 あと、昔からインドカレーが大好きで、自分でよく作ります。野菜とスパイスを炒めて、白菜とツナのカレーとか、ジャガイモとキャベツのカレーなど。多いときでは週に2回、3回作ることもあり、写真をブログにアップしています。一番時間があるのは朝なので、朝5時ごろから起きて作ります。カレーに使うスパイスには漢方薬に使われるものもありますし、野菜もたくさんとれて体にいいと患者さんにもオススメしているんですよ。
 もうひとつ、最近は「抹茶」にはまっています。茶葉を挽くミルがあることを知り、通販で購入。市販の茶葉は置いておくと渋みが出てしまうのですが、ミルで挽いて抹茶にして飲むと甘味が出て美味しいのです。香りもいいし、アイスに混ぜれば抹茶アイスになり、牛乳に入れれば抹茶オレにもなる。これは最近始めたばかりなので、まだ患者さんにはお話していませんが、機会があればオススメしたいと思っています。

くにやクリニック

医院ホームページ:http://kuniya.org/

JR山手線「大塚」駅南口より徒歩5分。地下鉄丸ノ内線「新大塚」駅より徒歩8分。
ゆったり過ごせる明るい待合室は、地元の人たちの交流の場になることもあるそうです。詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

内科、アレルギー科

小泉久仁弥(こいずみ・くにや)院長 略歴
1985年 岩手医科大学医学部卒業
1985年 福島県立医科大学
1991年 国立療養所翠ヶ丘病院
1992年 北里研究所東洋医学総合研究所
1996年 東京都立大塚病院東洋医学科
2000年 くにやクリニック開設
■資格・所属学会他

日本東洋医学会指導医、漢方専門医、日本医師会認定産業医、日医IT認定インストラクター、日医IT認定システム主任者

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