十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

[外来でよく使われる漢方薬] 2021/11/12
監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

  • 桔梗(ききょう)
  • 柴胡(さいこ)
  • 川芎(せんきゅう)
  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 防風(ぼうふう)
  • 甘草(かんぞう)
  • 荊芥(けいがい)
  • 生姜(しょうきょう)
  • 樸樕(ぼくそく)
  • 独活(どくかつ)

作用の特徴

化膿を繰り返す皮膚の炎症には、長期間にわたって服用を続ける必要がある

対象となる症状

  • 皮膚の急性炎症
  • 化膿を伴う皮膚の炎症
  • せつ腫症<身体中に慢性のせつ(おでき)ができる>

解説

 十味敗毒湯はおでき、にきび、皮膚炎、湿疹、じんましん、水虫など、さまざまな急性の皮膚炎に使われる漢方薬です。江戸時代の日本の外科医、華岡青洲が、中国の古典医学書『万病回春(まんびょうかいしゅん)』にある「荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)」をもとに創製した薬で、「10種類の生薬で毒素を取り除く」ことから十味敗毒湯と名付けられました。

 皮膚の炎症には、皮膚周辺の微小循環障害という、細かな血行障害が原因で起こるものが少なくありません。十味敗毒湯はそうした皮膚の微小循環障害を改善し、皮膚の炎症を治癒に導く体の応答を引き出します。
 一般的な皮膚炎のほか、癤(せつ)という化膿したおできが体の各所に繰り返しできる「癤腫症(せつしゅしょう)」の改善にも効果を発揮しますが、癤のようなしつこい化膿性の炎症に使う場合は、かなり長期間にわたって粘り強く服用を続ける必要があります。十味敗毒湯を長期服用する場合は甘草の副作用によって血中のカリウムが低下し、偽アルドステロン症やミオパチーを発症するリスクが高まるので、注意が必要です。

エビデンス情報

慢性湿疹ならびにアトピー性皮膚炎に対する十味敗毒湯の効果

 12才以上の慢性湿疹(貨幣状湿疹を除く)ならびにアトピー性皮膚炎患者で、浸出液が少ない軽症および中等症の患者74例を2群に分け、一方には抗ヒスタミン薬を、もう一方には十味敗毒湯を投与するランダム化比較試験(封筒法)を行ったところ、十味敗毒湯を投与した群と抗ヒスタミン薬を投与した群とで、ほぼ同等の改善度合いを示しました1)

十味敗毒湯・黄連解毒湯の尋常性ざ瘡に対する有効性

 尋常性ざ瘡患者268例を5つの群に分け、十味敗毒湯と黄連解毒湯(おうれんげどくとう) の服用や外用剤の使用効果を比較検討したところ、十味敗毒湯を服用した群では、皮疹の90%以上が消失した症例が50%前後だったのに対し、漢方薬の服用なしで外用剤のみを使用した群では8%でした。また、漢方薬ごとの比較でも十味敗毒湯と黄連解毒湯とでは、十味敗毒湯を服用した群のほうが症状消失の割合が高い結果となりました2)

参考

  • 1) 小林衣子ほか. 皮膚科における漢方治療の現況5, 医学書院 1994; p.25-34
  • 2) 大熊守也ほか. 和漢医薬会誌 1993; 10: 131-134
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