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柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

公開日:2021.10.11
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬 監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

作用の特徴

上腹部の激烈な炎症、呼吸器炎症の回復期、小児の虚弱と、3つの異なる病態に対して使われ、使い方が病態ごとに大きく異なる

対象となる症状

解説

 柴胡桂枝湯は、小柴胡湯(しょうさいことう)と桂枝湯(けいしとう)を合わせた処方で、応用範囲がたいへん広い漢方薬として知られています。
 さまざまな用途の中でも、特に代表的な病態が、上腹部の激烈な炎症、呼吸器炎症の回復期、小児の虚弱体質の3つです。柴胡桂枝湯を服用することによって、上腹部や呼吸器の炎症に対しては炎症を鎮める作用、小児の虚弱体質に対しては虚弱を克服する作用が、それぞれ期待されますが、このように引き出される応答が違うため、服用方法や回数なども大きく異なります。

 急性膵炎や急性胆嚢炎などの上腹部の激しい炎症を鎮める場合は、2~3時間ごとに頻回に服用する必要があります。肺炎などの呼吸器感染症から回復する時に使う場合は、上腹部の炎症の時とは違い、1日3回の服用で問題ないことが多いです。また、虚弱体質の小児が服用する場合は、1日2~3回の服用を数か月~数年の長期にわたって続けることが必要です。

 なお、長期投与をする場合は甘草による副作用のリスクがあります。偽アルドステロン症やミオパチーなどに注意しましょう。

エビデンス情報

慢性膵炎の治療効果

 特殊な薬物やストレスを必要とせず慢性膵炎、膵性糖尿病を自然発症するラットを2群に分け、一方のみに柴胡桂枝湯を投与したところ、12週目の段階において、柴胡桂枝湯投与詳の膵臓は肉眼的に正常であったのに対し、非投与群では出血・浮腫が認められました。また柴胡桂枝湯投与群では、炎症性サイトカインを抑制することにより、抗炎症作用を示すことが示唆されたり、慢性膵炎の膵臓に生じる、膵の繊維化を抑制する作用が認められたりなど、慢性膵炎の経口治療薬として柴胡桂枝湯を用いる際の基礎的エビデンスが確認されました1)

小児の夏風邪における漢方薬治療群と西洋薬治療群との比較

 夏風邪(急性上気道炎)で受診した小児419例を来院順に 2群に割り付け、漢方薬と西洋薬の治療効果を準ランダム化比較試験で比較したところ、漢方薬群で1回のみ受診の症例が多く全体的に回復が早い傾向が見られ、抗生物質を内服で使用した症例は漢方薬群で11名、西洋薬群で179例、抗生物質の点滴投与は漢方薬群で0例、西洋薬群で12例、急性気管支炎に進行した症例は漢方薬群で1例、西洋薬群で10例となりました。漢方薬群で使用された漢方薬には、桂麻各半湯(けいまかくはんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういちとう)、桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)、銀翹散(ぎんぎょうさん)、柴胡桂枝湯、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などがあり、柴胡桂枝湯は2回目の受診の際、最も多く使われました2)

参考

  • 1) 元雄良治ほか. 肝胆膵 2002; 44(3): 367 -375
  • 2) 阿部勝利ほか. 日本東洋医学雑誌 1993; 43(4): 509-515

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