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意外なところからやってくる、漢方薬の副作用

公開日:2011.06.14

意外なところからやってくる、漢方薬の副作用

山下さん(仮名) 74歳女性。
夫と2人暮らし、明るい性格。いつも和服で行動し、お茶を教えている。10年前に他院で左乳がんで手術。現在は、再発所見無く経過観察中。昨年暮れに知人の紹介で通院するようになった。
160cm 71kgとやや太め。BMI 26.1(BMI=体重kg/(身長m)2: 20<BMI<24)

外来診察室で・・・

 健康には人一倍、気を遣っている山下さん。いつものように血液検査結果を説明し、定期処方を電子カルテで確認しているときに、おもむろに心配そうな顔で尋ねてきた。

山下さん
「先生、実は・・・このところ足がむくむんです」
わたし
「孫達の世話で忙しくしていたせいじゃないの?山下さん。少しは、休んだらどうです?」
山下さん
「そんなんじゃないですよ、先生。夕方になると足袋(たび)がきつく感じるんですから」
わたし
「本当に?心臓がドキドキしたり、息が切れたりしませんか?」
山下さん
「階段を上がったときにはなりますがね、普段は大丈夫ですよ」
わたし
「そうですか。お小水の出具合はいかがです?」
山下さん
「昨年の猛暑以来、水分には気を遣ってますからね。それは大丈夫ですよ。それに震災以来、ミネラルウォーターを飲むようにしていますから」
わたし
「う~ん、あのね、山下さん。小さな子供達や妊娠を控えている女性は、水に注意した方がいいけれど、ある程度、年齢を重ねた大人は、今の水道水を飲んでも大丈夫だよ。ところで、どこか他の病院で、薬をもらったりしていませんか?」
山下さん
「体の調子は特に変わらないから、先生からいただいた漢方薬以外、飲んでませんよ」
わたし
「ぼくも山下さんの薬はこのところ、特に変えたりしていないですけれどねぇ・・・」

 漢方薬の副作用は、意外なところからやってくる。
 昭和生まれの人たちは健康に関心が高く、いろいろなことに注意を払っている方が多い。特にメタボリックシンドロームに気を遣い、甘いものを控えている場合に、漢方薬の副作用との関係が隠れていることがある。
 というのも、健康食品によく使われている「太らない」甘味料には、「甘草(リコリス)」という薬草が使われていることが珍しくない。これは漬け物や梅干しの甘味付けにも使用されるもので、慢性肝炎の治療薬(グリチルリチン)としても一般医療現場で活躍している薬の原材料だ。この甘草は、漢方薬の70%以上にも使われている。このため医療機関から処方された甘草を含む医薬品以外に、日常生活から摂取する甘草の成分が多い場合には、結果的に甘草の総摂取量が過剰となってしまう。副作用として浮腫(ふしゅ:むくみ)や高血圧などが出現する場合があるので、注意が必要である。

わたし
「そういえば、山下さんのカバンの中にいつも入っているのは、何ですか。ガム?それともアメ?」
山下さん
「このカリカリ梅のこと。美味しいんですよ、体にもいいし。先生もどう?」
わたし
「ねぇ、他にいつも健康のためにとっているもの、例えば健康食品みたいなもの、あるの?」
山下さん
「えぇ。いろいろありますよ。がん予防のために毎日欠かさず食べてますよ」
わたし
「そうか・・・もしかしたら山下さんがいいと思っているものが、逆に悪さしているかもしれないなぁ」

 健康食品や、がんに良いという補完代替医療品については、まだまだ、十分な情報がない。

 が参考になる。

まとめ

  1. 漢方薬も、副作用に注意する必要がある。
  2. 60歳以上の方で、むくみ、血圧上昇などの症状がでたら甘草による副作用を考える。
  3. 漢方薬を内服される方は、主治医へ必ず健康食品を含む補完代替医療品についても相談してみること。
今津嘉宏(いまづ・よしひろ)先生
芝大門 いまづクリニック 院長
1988年藤田保健衛生大学医学部 卒業、1991年慶應義塾大学医学部外科 助手、2005年恩賜財団東京都済生会中央病院外科 副医長、2009年慶應義塾大学医学部漢方医学センター 助教、2011年北里大学薬学部 非常勤講師、薬学教育センター社会薬学部門 講座研究員、2011年麻布ミューズクリニック 院長、2013年芝大門 いまづクリニック 院長

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