QLife漢方が、『漢方薬』の効果や効能、医学的・科学的情報を、わかりやすくお伝えします。

新規会員登録

漢方医学教育の現状と課題 “卒前教育から初期研修までの一貫性”への取り組み 後編

[漢方ニュース] 2011/03/25

 今回で11回目となる『KAMPO MEDICAL SYMPOSIUM2011』((株)ツムラ/(株)日経メディカル開発共催)が2月、東京・新宿の京王プラザホテルで行われ、全国の大学病院・地域医療に携わる850名を超える先生方が集まりました。今回のテーマは『大学卒前教育から初期研修までの一貫性のある漢方医学教育を目指して』。

 ※この記事は、漢方医学教育の現状と課題 “卒前教育から初期研修までの一貫性”への取り組み 前編の続きです。

地域連携型研修セミナーの実施

県央漢方研修医セミナー世話人会
海老名総合病院 病院長 内山 喜一郎 先生

 卒後教育での取り組みとして、内山喜一郎先生(県央漢方研修医セミナー世話人会/海老名総合病院病院長)からは、研修医への地域連携型漢方教育の導入についてお話いただきました。卒後の初期臨床研修においては、個々の研修病院においても漢方専門医や漢方処方に慣れた医師の数は少なく、継続的な漢方教育に苦慮しているのが現状とのこと。そこで西洋医学と東洋医学を融合し「人を診る」思考を持つ医師を育てたいと、神奈川県県央地区の4病院が集まって、2010年に臨床研修医・指導医を対象とした「県央漢方研修医セミナー」を立ち上げたそうです。外部の漢方専門医などを講師として招聘し、年2回開催。地域が連携して研修医を育てられる環境を作り、研修医同士がお互いに情報交換できるネットワークづくりを目指すことで、卒後漢方教育の充実を図っていくとのことでした。

地域の研修病院が連携して、研修医を育てる

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
井内 康輝 先生

 井内康輝先生(広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授)は、広島県内の臨床研修病院の取り組み事例を紹介。漢方教育には、大学と基幹的な研修病院が連携して取り組むことが必要であり、現在広島大学と4つの主だった研修病院では、連携して漢方セミナーを行っているとのこと。井内先生によると、近年行った研修医アンケートでは、漢方に関するセミナー・講義が必要と思う研修医は100%であり、臨床研修中に漢方外来を見学したいと思う研修医は70.7%と、研修医における漢方教育ニーズの高さを示しています。そのためにも、研修病院が連携して企画運営し、漢方教育を展開する必要があります。初期臨床研修においては、研修医の漢方への興味を引きだし、モチベーションを上げ、処方が自分でできるレベルまで引き上げることを目的とし取り組んでいるそうです。また、地域医療における漢方の必要性が高まっているため、地域枠入学者へは、卒前卒後教育で地域が連携して漢方教育を施していくべき、とのお話がありました。

徹底した実践教育が、診療現場での東洋医学の障壁を無くす

日本医科大学微生物学免疫学講座 教授
同付属病院東洋医学科 部長 高橋 秀実 先生

 次に、高橋秀実先生(日本医科大学微生物学免疫学講座教授/同付属病院東洋医学科部長)から、日本医科大学での「卒前から初期研修」までの東洋医学教育の現状と展望についてお話がありました。日本医科大学の特徴は徹底した実践教育。卒前教育においては、1年から全員に『医学概論』にて東洋医学・西洋医学の存在=医学は多岐にわたる事をまず理解させ、その後に基礎医学・臨床医学を通して、東洋医学に興味を持った学生に対して集中的に教えていきます。例えば鍼灸も体験させ、薬草園の見学では実際に薬草を舐めて味わって飲んでみる。それは後に非常に印象に残るそうです。そして卒後教育では、研修2年時に東洋医学科での研修を選択した研修医には、診療現場に同席させ、患者の前でマンツーマン指導を行います。ドクターとして患者のカルテをつくり、西洋医学での治療に漢方をどう取り入れるのかなど自分で考えさせます。「これからの医療においては、西洋と東洋の医学を統合した本邦独自の診療が当たり前となるのでは」、と話されました。

医学教育のこれからの課題

滋賀医科大学 学長
国立大学医学部部長会議 顧問 馬場 忠雄 先生

 最後は、馬場忠雄先生(滋賀医科大学学長/国立大学医学部長会議顧問)による特別講演「卒前卒後の医学教育のあり方」でした。医学教育カリキュラムは、知識詰め込み型教育から自ら課題を見出し解決する教育法へ、そして臨床実習は、見学型から参加型実習へと移行しています。滋賀医科大学では、独自の工夫を様々に取り入れており、例えば患者宅への継続訪問、一般市民が参加する医療面接の実施、学生による講義の評価、継続した診療所実習、スキルラボの充実、少人数での能動学習などを行っています。
 医学教育の課題には、大学・附属病院の脆弱な財政基盤、診療参加型実習における評価基準の曖昧さ、臨床実習技能を問わない医師国家試験、研修後の評価方法、研究医の減少などが挙げられます。馬場先生は「大学病院の財政基盤の確立、卒前医学教育で習得した知識や技術の適正な評価基準づくり、そして国家試験・研修制度の見直し。それらが連携することで信頼できる医師・研究医を生み出すことができるのです。ゆっくりはしていられません、今すぐに実行すべき時なんです。」と力強く訴えかけました。

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。