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漢方医は患者をこう診ている(3)切診

公開日:2017.09.27
カテゴリー:漢方ニュース

 漢方の4種類の診察方法の1つである、「切診」(触覚を用いた診察)について、問診と漢方薬の選択との関係について紹介します。

「脈診」、「腹診」、「圧診」、「撮診」の4種類がある「切診」

 漢方の診察では、からだのさまざまな場所の様子を触れてみることで診断する「切診」があります。切診には、「脈診」、「腹診」、圧迫して圧痛点などを見つける「圧診」、皮膚をつまみ、その厚さや痛み、過敏さを診断する「撮診」の4つの種類があります。
 
 「脈診」は文字通り「脈」を「診」て体の状態を探ること。漢方医学では、脈の状態は28種類に分類されています。なかでも重要なのは、浮、沈、遅、数、虚、実の六祖脈と呼ばれる6つの状態です。浮と沈は「証」の表裏、遅と数は寒熱、虚と実は「証」の虚実を表します。脈のとり方は一般的に、中指を親指の付け根にある手首の出っ張っている部分である、橈骨(とうこつ)の茎状突起に置き、その両脇に人差し指、薬指を置いて橈骨動脈の拍動をみる寸口診法(すんこうしんぽう)というやり方で行われます。そこから、病態の診断を行い、適した漢方薬(方剤)を決定していきます。

治療方針を決め、予後を判断する非常に重要な「腹診」

 「腹診」は中国より日本で発達したと言われています。なお、腹診は西洋医学でも行いますが、あくまで疾患本体の解明の補助という位置づけに対して、漢方では患者の虚実を判断し、治療方針を決め、予後を判断する非常に重要なものです。「傷寒論」によると、腹診は、患者は仰臥位で下肢を伸ばし、医師は左側に立ち、利き手で診察します。手は暖かくして最初は手のひらで胸から腹にむかって全体で軽くなでおろし、腹力で虚実を診ます。

 みぞおち部に圧痛を伴う場合は人参(にんじん)を含んだ方剤、胸脇苦満がある場合は柴胡剤(さいこざい)、腹直筋が過度に緊張している状態は芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) を中心とした方剤、胃内停水・振水音のある場合は茯苓飲(ぶくりょういん) などが処方されます。さらに、胸脇苦満と腹直筋の緊張があるときは柴胡桂枝湯(さいこけいしとう) 四逆散(しぎゃくさん) 、胸脇苦満と振水音がある場合は加味逍遙散(かみしょうようさん) が処方されるケースもあります。

 「脈診」と「腹診」は使い分けられており、一般的に「外感病は脈を主とし、内傷病は腹を主とする」と言われます。急性の熱性疾患などはその時々の変化が脈に現れやすいため脈診の方が適していて、慢性疾患は体質によることが多く、これを診るには腹診が適しているとされています。

(2017年6月開催 第68回日本東洋医学会学術総会「漢方入門講座 漢方と切診(関西医療大学 若山育郎先生)」をもとにQLife漢方編集部が執筆)

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