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漢方医は患者をこう診ている(1)望診・聞診

[漢方ニュース] 2017/08/18

 漢方では診察の方法として四診(ししん)と呼ばれる4種類の診察方法があります。視覚を用いた診察である「望診」、聴覚と嗅覚を用いた診察である「聞診」、現病歴や既往歴のほかに、患者の体質傾向を聞き出す「問診」、触覚を用いた診察である「切診」の4つです。そのうち、望診・聞診・問診と漢方薬の選択との関係について紹介します。

【望診】雰囲気や立ち居振る舞いも重要な要素

 漢方では人間の体を構成する要素として、生命的なエネルギーである「気」、栄養を与える赤い体液、すなわち血液の「血」、血液以外の体液はほぼすべてを「水」と定め、その状態を重視します。このほかに体力の有無、体力がある場合を「実」、虚弱を「虚」と定めています。「血」の巡りの悪さを表す“お血”も皮膚・粘膜の色調を視診で診断します。一番明確なのは目の下のクマです。それ以外では顔面の色素沈着やサメ肌、血管が浮き上がった状態も“お血”と診断します。

 舌の色・形・動きを見る舌診も行います。正常な舌は淡い赤色ですが、暗赤色の舌は血行不良で“お血”です。舌の辺縁が明太子のような非常に深い紅色である場合は絳(こう)と言い、少し「水」が不足しています。赤い色が強くなると熱がある状態とみて、熱を取る地黄(じおう)や石膏(せっこう)が含まれた漢方薬を検討します。

 また、舌の形も診ます。口を軽く開けた際に口角よりもはみ出していたり、舌の周りにと歯形がついていた場合は、“気虚”もしくは“水滞”を疑い、気虚では人参(にんじん)や黄耆(おうごん)が含まれた方剤、水滞であれば利水剤を考えます。舌の表面の苔は、薄く苔がついているのが正常、白苔が厚めについているのを膩苔(じたい)と言います。膩苔がやや黄色を帯びると、熱があると判断され、黄連(おうれん)などを含む清熱剤、消炎剤を考えます。黒っぽい苔は黄色の苔よりも熱がある状態で、炎症を抑える大黄(だいおう)を含んだ漢方薬を使うか、逆にあたためる附子(ぶし)剤を使う場合に分けられます。稀に地図状の苔があり、これは気血両虚、つまり精神・肉体的に弱っている場合に多く見られます。

【聞診】口臭は「胃が荒れて熱がある」と考える

 聞診は聴診と臭診を合わせたものを指します。聴診は声色、喘鳴、腹鳴、咳などから診察します。例えば、声に元気がなく、か細い場合は気虚として補中益気湯(ほちゅうえっきとう) を考慮します。湿性咳嗽で痰が少し絡んだような咳をする場合、咳を止める作用と痰をサラサラにする作用がある生薬の半夏(はんげ)が入っている方剤を考慮します。これに対し、喉の奥が乾燥し、咳込みがあるが痰はあまり絡まない場合は、麦門冬湯(ばくもんどうとう) を選択します。

 腸の音については、おなかがごろごろ鳴ったり、心窩部(しんかぶ)がつかえて少し下痢しやすい場合は半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) を考慮します。臭診は口臭があれば胃が荒れて熱があると考え、胃酸を抑える作用がある黄連が含まれた方剤を、便やガスが臭い場合は、炎症を疑い大黄が含まれた方剤を考慮します。

(2017年6月開催 第68回日本東洋医学会学術総会「漢方入門講座 知っておきたい 望診・聞診・問診のポイント(桜十字福岡病院 木村豪雄先生)」をもとにQLife漢方編集部が執筆)

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