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【前編】漢方の知恵でポジティブ・エイジング~第67回日本東洋医学会学術集会 市民公開講座から

[漢方ニュース] 2016/06/24

老化の速度を遅らせて、天寿を全うする

 香川・高松市で開催された第67回日本東洋医学会学術集会。その市民公開講座「市民のためのシンポジウム 自然のチカラで美しく健康に~心と体に効く漢方~」から、東京女子医科大学東洋医学研究所の木村容子先生の講演の模様を紹介します。

 ポジティブ・エイジングという言葉は、「アンチ=抵抗」ではなく、むしろ積極的に対応しよう、という意味の造語です。ではなぜポジティブ・エイジングなのでしょうか。1年経つごとに1歳年齢を重ねる以上、加齢は自然現象です。だから、時計の針を戻すことは不可能です。

 漢方医学では女性は7年、男性は8年ごとに体の変化がある、という考え方があります。女性の場合では、14歳で初潮、21歳で女性らしい均等のとれた体になります。28歳で体や性機能のピークを迎え、35歳で容姿が衰えはじめます。42歳で白髪の生え初め、49歳で閉経します。これは2000年前の医学書に書いてあるのですが、今でも閉経年齢はそれほど変わっていません。こんなに医療も進歩しているのに、なぜこれは後ろにずらせられないのでしょうか。それどころか、本来ピークであるはずの20~30代の女性に体の不調を訴える方が非常に多くなっています。ちなみに、男性の場合は32歳がピークで64歳で老年期を迎える、とされています。

 このように、年齢によって体は変化する、これを認識することが大事です。ならば、加齢に抵抗するよりも、加齢に伴う老化の程度を遅くする、ひいては寿命を全うできるように、ポジティブ・エイジングという言葉を作りました。「長生き」というのは短い寿命を長くすることではありません。老化の速度を遅らせて、天寿を全うすることがポジティブ・エイジングの考え方です。

漢方の考える「健康」とは?

 漢方では「健康」と「病気」の間の状態を「未病」と考えます。いくら検査値がすべて基準値以内であっても、例えば関節に痛みを感じていたら、それは「健康な状態」ではありません。この段階で養生すれば、自分で健康な状態に戻せますが、放置しておくと病気になるかもしれません。西洋医学では「病気の人」のみが治療対象ですが、漢方では「病気」だけではなく、「未病」、さらには「健康増進」まで治療の対象としています。

 漢方では「上薬」「中薬」「下薬」という分類法もあります。人参(ニンジン)や大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)といった「上薬」は命を養う=健康増進薬として分類。「中薬」は体質改善や発病を抑えて虚弱を補う薬と定義されていて、黄耆(オウギ)や当帰(トウキ)、葛根(カッコン)などがそれにあたります。「下薬」は病を治す反面、副作用も強いものとされていて、大黄(ダイオウ)や附子(ブシ)が分類されています。

自分にとって適切な情報を取捨選択すべき

 テレビ、新聞、webを見ても、今は健康情報がどこにでもあります。また、医療も江戸時代や2000年前に比べると遥かに進歩しています。なのに、どうして健康に悩む方がこれだけいらっしゃるのか。これだけ情報があふれているにも関わらず、自分にとって適切な情報を取捨選択できていないことがその大きな理由だと考えます。この解決法の1つとして、漢方の「養生」の考え方を取り入れ、自分に合ったライフスタイルを見つけることだと思います。

 江戸時代に「養生訓」という本を書き上げた貝原益軒という儒学者は、「不養生は自殺と同じ」と述べています。彼は84歳まで生き、「養生訓」は83歳の時に世に出ました。「ほとんどの人は、生まれつき持っている寿命は長い。しかし、養生しないと寿命を全うできず早死してしまう」という考えが根底にあります。江戸時代においても、「治療の前に養生が大事」だということは徹底されています。養生が不十分な時にはじめて治療を行うのです。

病院や薬に頼る以前に、生活を見直すことが重要

 東京・西日暮里で診療していますが、日々さまざまな患者さんが訪れます。

 花粉症がひどく、3~4種類もの薬をのんでいる男性。生活習慣を聞いて見ると、毎日夜10時ごろに夕食を食べて寝るのは深夜2時ごろ。
 疲れやすくやる気がないと訴える女性。食生活を聞いて見ると、食事は1日1回。お腹が空いた時にはチョコとかお菓子を食べている。
 夏でも寝る時には靴下を手放せないほど強い冷えを訴える女性。診察時に足元を見ると、素足に高いヒールの靴。

 なんか変だと思いませんか?でもこれらは特別な方ではありません。日々こうした方々が診療所にいらっしゃいます。病院や薬に頼る以前に、生活を見直すことが重要なのではないでしょうか?

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