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その不調、漢方にできることがあります!~第67回日本東洋医学会学術集会 市民公開講座から

公開日:2016.06.20
カテゴリー:漢方ニュース

肩こり、めまい、イライラなど…不定愁訴にまず「養生」!

 6月3~5日まで香川県・高松市で開催された第67回日本東洋医学会学術集会。その市民公開講座「市民のためのシンポジウム 自然のチカラで美しく健康に~心と体に効く漢方~」から、香川県立保健医療大学看護学科の塩田敦子先生の講演の模様を紹介します。

 肩がこる、めまいがする、イライラするなどの不定愁訴。「病院に行くほどでも…」と感じている方も多いかもしれません。漢方医学にはこうした「養生」という考え方があり、「しっかり休む」「早寝早起き」「朝ごはんはしっかり。旬のものを食べる」「ゆっくり入浴する」「ウォーキングなど軽い運動をする」「夜遅くまでスマホを見ない」「映画などで気分転換する」などが養生の一例です。

 それでも、いまいちスッキリしないと感じた時。そんな時は漢方の得意分野です。漢方で考える「健康」の定義は1つではなく、西洋医学でよく見られるような正常値という考えはありません。季節や環境の変化に対し、私たちは、それぞれが持つ自己治癒力で、「中庸な状態」になろうとします。このバランスが完全に崩れると「病気」になりますが、不安定になっている状態を漢方では「未病」と考えます。これを本来あるべき「中庸」の状態に戻すには、まずは最初に挙げた「養生」を行ってください。それでも治らない時は、漢方薬という選択肢があります。漢方は、私たちが本来持っている自己治癒力を高めて症状を軽くしてくれます。

 漢方ではよく「心身一如」という言葉がつかわれます。心と体は1つである、ということです。例えば、病気や事故、妊娠など体の変化に伴い、心も変化します。もちろんその逆も。失恋や心配事などの大きな出来事があると、胃が痛くなったり、動悸が激しくなったり。漢方では体と心を分けるのではなく、1つのものと考えます。その他にも「天人合一」や「陰陽」など、さまざまな考え方が漢方には存在します。

生薬がチームワークを発揮する漢方薬

 ところで、落語の「葛根湯医者」の話をご存じでしょうか?

 「頭が痛い? 葛根湯をおあがり。次は腹痛? 葛根湯をおあがり。今度は目が痛い? 葛根湯をおあがり。次は…」「先生、私は単なる付き添いですが」「付き添い? 退屈でしょう、葛根湯をおあがり」

 というように、来る人来る人に葛根湯をすすめる話なのですが、本当に葛根湯医者は“ヤブ医者”なのでしょうか?実はあながち間違いばかりとも言い切れないのです。漢方薬は複数の生薬を組み合わせてできています。葛根湯は、葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、桂枝(ケイシ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)の7つの生薬からなり、それぞれ役割を持っています。麻黄と桂枝は発汗を促進し熱を下げる作用が、葛根と芍薬には肩の凝りや筋肉をほぐす作用が、芍薬には発汗しすぎないように調整する作用が、甘草は生薬のエグみを取り調和させる、大棗は胃腸の調子を整える、生姜には栄養を補給する作用がそれぞれあります。このように、チームで1つの目的(治療)に向かって、それぞれが持ち味を発揮するのが漢方薬の特徴です。

 同じ“風邪”でも症状や患者さんの状態によって、最適なお薬が異なるのも漢方の良いところです。例えば、熱は高いが汗は出ない、首筋が張っている感じがする場合は葛根湯(かっこんとう) 、微熱はあるけど寒気の方が強くて、だるくて起き上がれない場合は麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) を出すなど使い分けを行います。これを漢方では「同病異治」といいます。症状そのものに処方する西洋薬とは異なり、症状を持っているその「人」に対して処方を行います。逆に先ほどの葛根湯医者の場合は「異病同治」といいます。葛根湯は風邪だけでなく肩こりや目の病気にも効果がありますし、滋養強壮の効果もあります。なので、葛根湯医者はあながち“ヤブ”ではないのです。

 漢方治療では、症状を「バランスが崩れた状態」とみます。そのバランスを「中庸」の状態に戻すために、その人の体質や歴史なども見て最適な漢方薬を選ぶ。それが基本的な漢方の考え方です。

メタボ、冷え症、食欲不振…お悩み別ぴったり漢方薬ガイド

 漢方では「気のせい?」と思うような症状もバランスの崩れと考え、「中庸」に戻すためのさまざまな薬があり、先人の知恵とノウハウが今も生き続けています。また、漢方は「症状」そのものではなく、「症状が出ている人」にアプローチする考え方です。なので。もし気になることがあれば、医師や薬剤師にどんどん質問していただければと思います。

メタボ体型

 暴飲暴食で血圧が高めの方の場合は、体に熱がこもっていると考え、便や尿、汗を通してその熱を排出することを第一に考え、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん) を処方します。以前、肥満症の患者さんに防風通聖散を処方したところ、体重減に加えて、コレステロールや中性脂肪が減ったとするデータもあります。一方、女性に多い「汗っかきですぐに疲れる。水を飲んでも太ってしまう」という方には、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) を処方します。

冷え症

 手足がとにかく冷える、冷えると下腹部が痛くなる、立ちくらみもする、といった方には末梢の血流を良くする生薬が入っている当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) を処方します。また、更年期世代の女性に多い、足は冷えるものの、上半身はのぼせる方は、気の流れが悪いものと考え、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) を処方します。桂枝茯苓丸は実は打ち身にも効果があり、まさに「異病同治」の典型的なものといえます。

食欲不振

 ムカムカして胃がもたれる。冷えて下痢っぽい方はエネルギーが足りなくなっているうえに、胃に水が溜まって流れていない状態と考えます。胃を動かして、あたため、水を排出させるために六君子湯(りっくんしとう) が処方されます。緊張で食べられない、イライラ&不眠で悩む方には四逆散(しぎゃくさん) が使われます。

イライラ、うつうつ

 月経前になるとイライラする、ちょっと便秘気味、暑くなったり寒くなったり感じる女性には加味逍遥散(かみしょうようさん) が処方されます。また、のどが詰まる感じやドキドキして不安感が強い方には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) が処方されます。

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