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【話題の本の著者に聞く】弁証論治による正統な漢方方剤の選定を広めていきたい~漢方みず堂 河端孝幸氏

[漢方ニュース] 2016/06/06

弁証論治による漢方方剤選定の手引き(空海舎 税別7,200円) 漢方みず堂の編集による、臨床現場で実務的に使える手引書。弁証論治の基礎知識や専門用語の解説も充実しています。

 元々漢方薬は、中医学での診断治療の方法論である「弁証論治」という考え方に基づいて処方されていました。弁証論治では、まず中医学の診断方法である望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診(もんしん)、切診(せっしん)の四診に基づき、患者の現時点で現している症状を把握します。さらにその結果を中医学の概念である陰陽、虚実、 気血水、寒熱、表裏、五臓、六病位などの基本概念を通していわゆる最終診断である「証」を確定し、そのうえで処方する漢方薬を決定します。

 2011年に日本漢方生薬製剤協会が行った漢方薬処方実態調査によると、漢方薬を処方している医師は9割弱と、西洋医学の医師からも漢方薬が処方されることは珍しくありません。ところが漢方薬の処方の裾野が広がってきている一方で、こうした弁証論治そのものへの理解が低下しているとの指摘もあります。

 そうした中で、佐賀県と福岡県を中心に「漢方相談薬局」を展開する株式会社漢方みず堂が、このほど「弁証論治による漢方方剤選定の手引き」(空海舎)を出版しました。発売後、重版にも至っている同書を出した経緯について、漢方みず堂の河端孝幸・代表取締役社長にうかがいました。

著者インタビュー 株式会社漢方みず堂 河端孝幸・代表取締役社長

同じ便秘でも、患者さんの身体の状態で“合う”漢方薬は異なる


カラフルな図表を使って解説するなど、弁証論治を分かりやすく学ぶことができます。

 漢方薬は、あくまで中医学の弁証論治に基づく処方が基本で、西洋医学的な対症療法とは根本的に思考が異なります。にもかかわらず、漢方薬の処方のみが独り歩きし、「頭痛には○○」など症状と特定の漢方薬の、単純なセットで処方されるケースが増えてきたように思います。臨床で実務書として使用でき、また使用していく中で、弁証論治による正統な漢方方剤の選定を広めていきたい。そのような想いで本書を制作しました。

 弁証論治の手法の1つに、抵抗力がある人を実証、その逆を虚証と診断するなど、患者さんの体の抵抗力を「虚実」という形で評価する方法があります。

 例えば同じ便秘でも虚証の患者さんと実証の患者さんでは処方する漢方薬が異なります。弁証論治に基づかない、漢方薬処方により、「漢方薬を服用しているのにあまり効果を感じない」と訴える患者さんもいます。このような弁証論治ですが、参考になる資料が少ないという声もよく耳にします。そうした現状を鑑みて今回の出版に至りました。

ベースとなる八綱弁証を分かりやすく丁寧に

 書籍内では疾患別の記述形式をとっていますが、疾患ごとに「虚実」も含め、中医学の基本概念である、体の部位や疾患の性質を分類する「陰陽」、体の冷えとほてりから病気の性質を識別する「寒熱」、体の中で疾患に対して反応している、あるいは発現している場所を示す考え方の「表裏」という合計8種類の対立概念に分類し病態を診断する八綱弁証(はっこうべんしょう)を軸にすえて解説することを重視しました。八綱弁証は弁証論治の根幹をなすものであり、ここを取り違えてしまえば漢方薬の処方そのものに齟齬が生じるからです。

 この八綱弁証からさらに臓腑の生理と臓腑間の相互関係を検討する臓腑弁証などへと展開していく手法で全体の流れは構成されています。また、使用する用語は中医学の用語で、医療従事者でも聞き慣れないものが多いのが現状なので、各用語とも懇切丁寧な説明を心がけました。

弁証論治に基づく漢方みず堂の漢方相談

 西洋医学において、どちらかといえば薬剤は「治療」という概念がありますが、中医学における漢方薬は、「予防医学」に近い概念を持つ薬剤です。また、1つの生薬でも様々な複雑な作用を示すので、西洋医学的アプローチですべてを理解するのは困難と私は考えています。だからこそ、漢方薬処方に当たっては弁証論治を徹底すべきなのです。

 漢方薬専門の相談薬局である、漢方みず堂では、患者さんに対し、これまでの経過や体質などを弁証論治に基づいて、詳しくお話を聞きます。なぜその症状に至ったのか、今後いかにして健康を回復していくかを患者さんそれぞれの事情に合わせてお話します。そのうえで漢方薬を決定し、煎じ薬の作り方、服用方法などを丁寧にご説明します。漢方薬にあまり馴染みがない患者さんには、基本的な決まりごとや、生活スタイルに合わせた服用方法などもアドバイスします。

 漢方薬をお渡しした後も、担当相談員が、煎じ方やのみ方の確認やその後の経過を電話やメールなどでお伺いし、適切な対処をしていきます。とりわけ漢方薬の場合は、西洋薬と違い、正しく服用できているかを確認することの重要性は高いと考えています。漢方薬をお渡しして終わりではなく、患者さんの生活習慣の改善へのサポートや励ましなどのアフターフォローを通じて、患者さんに寄り添い、ともに歩むこと。それが、私たち漢方相談薬局の在り方と考えています。

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