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患者中心の医療を可能にした日本の漢方医療とは

[漢方ニュース] 2015/08/05

 6月に富山で行われた第66回日本東洋医学会学術総会主催の市民公開講座(共催:日本漢方生薬製剤協会)から、東京女子医科大学 東洋医学研究所 教授の伊藤隆先生による講演「良い漢方医の選び方」の模様を紹介します。

漢方ならではの「同病異治(どうびょういじ)」「異病同治(いびょうどうち)」が薬を減らす

 それぞれの病気に対応する薬を選ぶ西洋医学とは異なり、漢方医学は患者さんがどのような状態にあるか、どのような症状に悩んでいるかを見極め、治療方針を決定します。

 その分かりやすい例として、伊藤先生は葛根湯(かっこんとう) を挙げました。「“風邪には葛根湯”のように決まりきったセットとして覚えている方も多いですが、漢方では同じ風邪でも症状によって、さまざまな選択肢があります。その逆に、葛根湯を風邪の症状だけでなく、高血圧や夜尿症、さらには歯痛にも転用できる、と解説している専門書(矢数道明『臨床漢方処方応用解説」1966年)もあります。このような“同病異治”“異病同治”が可能なのが漢方の良いところです」(伊藤先生)

 この「“異病同治”の考えは、薬の数を減らすことにもつながる」、と伊藤先生はいいます。「例えば、高齢者の方で、高血圧や肝機能障害、高脂血症の基礎疾患をもち、頭痛や肩こり、腰痛、そして夜間の頻尿や呼吸困難などの症状に悩んでいるか方がいるとします。どれも、高齢者ではありがちな疾患や症状です。西洋医学の発想では、これらの病気や症状1つ1つに対して、それに対応するお薬が処方されますが、体全体を整える発想をもつ漢方では、症状に関連性がある場合、1つの漢方薬で複合的に治していきます(下図)。漢方を取り入れることで、お薬の数を減らせる可能性があります」(伊藤先生)

【薬を少なくする漢方治療の検討例】
西洋医学 症状 漢方治療
鎮痛薬 頭痛 五苓散(ごれいさん)
胃薬
筋弛緩薬 肩こり
降圧薬 高血圧 大柴胡湯(だいさいことう)
肝庇護剤 肝機能障害
抗高脂血症薬 高脂血症
α1遮断薬 夜間尿
外用薬 腰痛 八味丸(はちみがん)
抗コリン薬吸入 呼吸困難

日本では西洋医学と漢方医学の治療が同時に受けられる

 近年、患者中心の医療を実現する手段の1つとして、統合医療の重要性を指摘する声が高まっています。西洋医学だけでなく、漢方や鍼灸などに代表される伝統医学や補完代替医療なども含め「患者さんが治るためにはどうすればいいのか」を幅広く選択できることが、真の患者中心の医療につながります。

 海外の調査では、50歳以上の7割が西洋医学以外の伝統医療や伝承的医療を経験していることからも、治療の選択肢が大きく広がっているのが分かります。ところが、こうした補完代替医療には、異なる複数の施設を訪問することで、患者さんの体全体を包括的に診ることができない「治療上の空白」が生まれることや、かえってお薬が増える可能性が指摘されています。

 それに対し、「日本の漢方医療は世界の最先端にあります」と伊藤先生。「同じく伝統医学を積極的に取り入れている中国や台湾では中医学、韓国では韓医学と称されこれらの国々では伝統医学と西洋医学それぞれの医師制度が異なっているため、“中医学・韓医学はできるけど、西洋医学はできない”という場合があります。一方、日本では一人の医師が西洋医学と漢方医学の治療を同時に行うことができ、まさに東西両医学の治療を患者さんに対して実践できます」(伊藤先生)

 「“漢方専門医”であることに加え、その医師が西洋医学のどの分野での専門性を持っているのかを調べることも、良い漢方医の選び方の1つである」と結ばれました。皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか。

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