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高齢者の精神症状・不眠に効果的な漢方薬は?

公開日:2015.08.12
カテゴリー:漢方ニュース

 高齢者の精神症状や不眠には、一般的に向精神薬や睡眠導入剤が処方されていますが、ふらつきや転倒などに注意が必要です。そのような高齢の患者さんに対し、漢方薬が有効な場合があります。第57回日本老年医学会学術集会で、大阪大学大学院 医学系研究科 精神医学教室の田上真次先生が高齢者の精神症状や不眠対策で効果的な漢方薬の使い方について講演しました。

高齢者の精神症状に広く応用が可能な抑肝散

 高齢者の精神症状に効果的な漢方薬として、田上先生は認知症の行動・心理症状の緩和でエビデンスのある抑肝散(よくかんさん) を挙げました。「抑肝散は7つの生薬から成る漢方薬で、鎮静・催眠・抗けいれん作用があります。抑肝散は行動・心理症状以外の高齢者の精神症状に対しても広く応用が可能です」(田上先生)。

 加えて、軽い気分の落ち込みや消化器症状を訴える高齢者に対しては、抑肝散に陳皮と半夏を加えた、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ) も効果があるとのこと。これら2つの漢方薬のいずれかでも効果が見られなかった場合は、黄連解毒湯(おうれんげどくとう) を単独、もしくはこれら2つのどちらかと併用して使うこともある、と語りました。ほかに、意欲低下と食欲低下がみられる場合は補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 、甘草が原因による低カリウム血症が疑われる場合は甘草を含有しない七物降下湯(しちもつこうかとう) を挙げました。

高齢者の不眠はパターンによって漢方薬を使い分ける

 高齢者の不眠はまずそのパターンを見分けることが重要、と田上先生。不眠のパターンには、布団に入ってもなかなか寝付けない「入眠困難」、途中で起きてしまう「中途覚醒」のほか、「熟睡感が無いこと」の3つがあります。

 入眠困難の場合は、まずは抑肝散を使い、効果が不十分な場合は黄連解毒湯を併用します。中途覚醒の場合は半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) を使います。そして、熟睡感が無い場合には、酸棗仁湯(さんそうにんとう) 加味帰脾湯(かみきひとう) が使われます。

 ニュースなどでも高齢者の向精神薬の処方が話題になっていますが、同じ症状に対処できる漢方薬は多くあります。一度、主治医の先生に相談してみてはいかがでしょうか。

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