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ニュースなどで話題の漢方クリーム。漢方薬とどう違うの?

[漢方ニュース] 2014/06/11

漢方クリーム事件とは?

 2014年3月、いわゆる「漢方クリーム事件」が明るみに出ました。これは、横浜市内のとあるクリニックで処方されていた「漢方クリーム」とよばれる外用薬に、成分表示がされていないステロイドが含有されていたことが原因となる健康被害が多数例報告されたというものです。この外用薬はアトピー性皮膚炎の患者さんに多く処方されていましたが、国民生活センターが調査したところ、最も強力とされるステロイドの1つ、プロピオン酸クロベタゾールが0.05%含有されていたことがわかりました。消費者庁消費者安全課は「皮膚萎縮や緑内障などの副作用の恐れがある」と注意喚起を行っています。
 ステロイドと聞くと、何にでも聞く特効薬のようなイメージがあるかもしれません。アトピー性皮膚炎だけではなく、アレルギー性鼻炎や気管支喘息にも有効であり、非常に使用範囲の広い薬剤です。一方で使い方を間違えると重大な健康被害を招く可能性もあることもわかっており、その効果の強さから以下のように5段階に分けられています。どの疾患どのレベルで何を使用するべきか、各々のガイドライン等によって細かく規定されている薬剤なのです。

I群 II群 III群 IV群 V群
strongest
(最強)
very strong
(非常に強い)
strong
(強力)
medium
(中程度)
weak
(弱い)

 例えば今回のようなアトピー性皮膚炎の場合、重症度や皮疹の部位および性状、あるいは年齢等に応じて、その時点で最適と思われるものが処方されます。また長期間使用後に突然中止すると、皮疹が増悪する可能性が示唆されているため、使用量や効果の強度をモニタリングすることが重要であり、自己判断での使用や中断は最も避けるべき薬剤の1つです。今回のようなアトピー性皮膚炎の場合には、最重症の大人でもII群以下の薬剤の使用が推奨されています。つまり今回含有されていたステロイドは、そもそもアトピー性皮膚炎に対しては強すぎる薬剤であり、それが「ステロイドを含有していない」と虚偽の表記をした上で処方していた―これがこの事件の根本的な問題です。

漢方=中国製 というのは大きな間違い

 今回の「漢方クリーム事件」に注目すると、「中国製の漢方クリームは危険」という意識が喚起されるかも知れませんが、大きな誤解です。これは報道するメディア側にもある程度の責任がありますが、この言葉には2つの大きな間違いがあります。1つは「漢方クリームは危険」という部分。漢方クリームが危険なのではなく「ステロイドを含有していないという虚偽の表記により処方された外用薬」が危険なのです。
 そしてもう1つの間違いは、「中国製の漢方クリーム」という点です。今回の「漢方クリーム」は当該クリニックに勤務していた中国人女性が中国で作ったものを仕入れて、日本の医師が調剤していたようですので、この意味では確かに中国製のクリームでしょう。しかし厳密に言えば、日本でいう「漢方」とは同じものではありません。
 一般に、漢方と聞くと中国で作られた生薬を元にした薬剤、と考えがちですが、ここに誤解があります。現在の中国で使用されている生薬を元にした薬剤は、正確には「中国伝統薬(中薬)」と表記するべきものです。これが翻訳などの際に全て「漢方」と表記されているため、「漢方薬=中国製」という間違った認識が浸透してしまっています。今回の事件は「中国製の漢方クリーム」と表記されていますが、正確には「中薬クリーム」もしくは「生薬配合クリーム」となるべきなのです。
 漢方医学は、約1,800年前に集大成された中国医学が、奈良時代ごろから日本に伝来し、日本の気候や日本人の体質に合わせて独自に発展を遂げ、江戸時代に確立された日本の伝統医学です。「漢方」という呼称も日本独特のものであり、中国独自に発展を遂げた中医学と異なる医学として体系付けられています。この医学で使用されるお薬が漢方薬であり、中医学で使用される中薬と区別されています。今回の製品が中薬なのか単なる生薬配合のお薬という意味合いだったのかはっきりしませんが、漢方薬ではないことは明らかです。本来はこういった明確な区別があるにもかかわらず、生薬配合のお薬はすべて漢方薬という間違った認識が広まってしまっているようです。
 最近では、医療の最前線でも漢方薬が必要とされてきています。現在、医薬品として使われている多くの漢方製剤は「エキス剤」と呼ばれるものです。エキス剤は、生薬を煎じた液を乾燥させたエキス粉末を製剤化したものです。煎じる手間がかからない上、携帯に便利で、服用しやすく、長期保存も可能です。品質が均一な製剤が、多くの人に使用されるため、大量のデータを蓄積することが可能となり、科学的根拠(エビデンス)の解明にもつながっています。

日本の製薬メーカーによる、日本人のための漢方薬

 日本の製薬メーカーが作る、漢方薬は、「薬剤」として販売するために、厚生労働省からの承認を得たものだけが販売できます。また一度承認がおりたものも、販売期間中は実際に処方された後の安全性や有効性などの情報を集約して、調査が行われ、厳しい条件をクリアしたものだけが、日本製の漢方薬として使用されているのです。
 もちろん、薬剤であればすべて安全というわけではなく、体質や症状に合わないこともあるかもしれません。しかしこれらを考慮した上で、医師の診断により処方された薬剤であれば、大きな効果が期待できます。現在の日本では、医学部や薬学部の教育カリキュラムにも漢方医学の項目が組入れられ、医師の89%が漢方製剤を処方しているという調査もあります。万が一、医師の処方による正規な漢方薬により健康被害が出た場合は、医師の診断により適切な対処がなされます。つまり、漢方薬は含まれる成分が生薬由来のものであるというだけで、化学成分由来の一般的な薬剤と変わりありません。
 この考え方は今や世界も注目しており、ここ数年間の世界的に著名な学会などでは、毎年20演題を越える漢方薬に関する最新の研究成果が報告されています。つまり日本製の漢方薬は、非常に高い技術の下で品質保証がなされていること、最新の研究でも薬効・薬理が解明されており、客観的な視点でその有効性・安全性に関する研究が進められています。現在、医療の最前線で漢方薬が評価され、期待されています。

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