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こんなに違う!? 中国と日本~みなさんの漢方・漢方薬に関する疑問・誤解を日本東洋医学会副会長に伺いました(前編)

公開日:2013.11.29
カテゴリー:漢方ニュース

 医療現場で漢方が処方されるケースも多くなり、多くの患者さんにとって漢方はより身近な存在になりつつあります。それに伴い、漢方に関するさまざまなニュースや話題がメディアに取り上げられることが多くなりました。しかし、その中には、誤解や勘違いを招くものもあり、多くの患者さんから疑問・質問が寄せられています。
 そこで、QLife漢方では、日本東洋医学会副会長の鳥居塚和生(昭和大学 薬学部 創薬分子薬学 生薬学・植物薬品化学 教授)先生に、「そもそも漢方薬ってどんな薬?」など、ユーザーの皆さんから寄せられた素朴な疑問・質問への解説をお願いしました。1回目は、最近、メディアで話題の記事について聞きました。

Q.近年、新聞や海外メディアからの記事で、英国では中国伝統薬(中薬、中成薬)の販売禁止とか、農薬汚染が報道されていますが、一般生活者が留意すべきことは?

日本のメディアのなかには、翻訳の過程で誤った表記で報道されたケースがある


日本東洋医学会 副会長
鳥居塚和生先生

 英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)が、2013年に次の様な内容を発信しています。8月20日付けでは「一部の無認可の中国伝統薬の中に、鉛、水銀、砒素の危険な高レベル含有が判明」との警告を発信、また9月には「中国伝統薬に含まれる有毒物質を問題として来年から英国国内の販売を禁止」との発表がありました。中国国内の中薬薬局で販売されている中薬の一部に農薬の残留があることも指摘されています。
 しかしながら、これらが日本国内で報道される場合に、正確には「中国伝統薬(中薬)」とすべきところ、「漢方薬」という誤った表記による報道が見受けられます。この漢方薬という表記を見て、漢方薬は大丈夫かと考えてしまい心配される方がいるかもしれません。
 これは翻訳の過程で、すべて「漢方薬」と訳されてしまうことに起因しています。翻訳を担当の方で、理解されている方は言葉を区別して直していますが、一般に利用されている辞書や翻訳システムの中では、その区別が明確になっていないのが実情です。
 日本の医療機関から出されたり、薬局で購入した漢方エキス製剤を服用されている患者さんが、誤った翻訳による報道を受けて、ご自身が服用されている薬が心配になり、服用を中止してしまうことを危惧しています。特に、日本国内の医療機関にて処方箋薬で服用している場合は、日本の医薬品ですので、そのような心配には及ばないことを申し上げます。逆に医薬品ですので、自己判断で服薬をやめてしまうことは避けていただきたいのです。もし万が一、不安なときには必ず医師または薬剤師に相談していただきたいと思います。

「天然」「自然」由来だからと安易に信じないことが重要

 天然の植物由来のものとおもって、個人で輸入したり、海外で入手したダイエット用のサプリメントの中にリバウンドの危険性がある代謝性ステロイドが高含量で含まれ、それによって有害な症状が起こってしまったなどの事故例が後を絶たたないことも事実です。
 日本の漢方薬は品質や安全性が保証されていますが、今やだれでもインターネットで簡単に海外の薬やサプリメントを購入できますし、海外旅行時に現地で購入することができます。全ての物が危険な物質を含んでいる訳ではありませんが、危険な物質を含んでいる可能性があること、また日本では販売が承認されていない薬を含んでいる可能性があることを改めて認識すべきだと思います。
 “天然由来だから安心”ということを謳ったサプリメント等が数多く販売され、天然の物、自然由来の物だから納得して、一般的に受け入れ易いものかと思います。しかしながら、このことに大きな“落とし穴”があります。天然由来の有毒なものもありますし、少量では問題なくても、多量や長期にわたる服用で、未知の被害が顕在化するケースもあります。また、「売らんかな」という商品では、即効性を狙って強い作用を持つ化学成分を添加することも少なくありません。輸入品や個人輸入で買えるものの中には、サプリメント、食品というカテゴリーにあっても、健康を脅かす危険性のあるものも含まれていることがあるということを念頭においておく必要があります。信頼のおけないものには、安易に手を出さないことです。
 服用し、体調が少しでも変に感じたときには、「何を、いつ、どのくらい服用したか」と言う情報とともに、「現物」をもって、すぐに医師や薬剤師に相談をすることも、大切な心構えなのです。(中編へ »

鳥居塚和生先生
日本東洋医学会 副会長、日本東洋医学サミット会議 事務総長

1977年千葉大学薬学部卒、1979年千葉大学大学院薬学研究科修了。薬学博士。エスエス製薬(株)中央研究所 研究員、富山医科薬科大学、テキサス大学(客員研究員)、北里研究所東洋医学総合研究所等を経て、2000年昭和大学薬学部助教授、2006年昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学教室教授に。現在は昭和大学薬学部 創薬分子薬学 生薬学・植物薬品化学・教授、日本生薬学会 財務幹事、和漢医薬学会 理事。

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