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第15回市民公開漢方セミナー「漢方に親しむ」

[漢方ニュース] 2012/11/09

セミナー写真 10月11日(木)、東京・赤坂の草月ホールにて、日本漢方生薬製剤協会主催による第15回市民公開漢方セミナーが開催されました。原因をはっきりと特定できない症状の改善が期待できるとして注目を浴びる漢方薬は、近年臨床試験での効果も認められ、今や9割以上の医師が処方経験ありと答えています。
 今回のセミナーでは、ダイナメディカル根津クリニック院長の定形綾香先生を講師にお迎えし、漢方医学の歴史や特長、服用のポイントなどをお話いただきました。

食養生をもって病を治す(養生について)

 定形先生はまず、漢方薬のルーツである中国医学の歴史について説明してくださいました。中国医学は、病原を追求し、食をもって治療をするという考え方のもと、「食養生」を重視。明確な疾病に発展していない「未病」を治すことを根本哲学にしており、その歴史は、約3000年前の周代に遡ります。当時は「食医」と呼ばれる医師がおり、食養生のほうが薬物治療より重要と考えられていたそうです。
 それから2000年後の唐代においても食養生が健康管理の基本であり、それぞれの食材を四気(寒熱温涼)と五味(酸苦甘辛鹹)に分け、五行説に沿って患者に食事指導をしたと言われています。たとえば、キュウリは「寒・甘」、白菜は「涼・甘」、鶏肉は「寒甘辛」と分別されています。五行説とは、万物は5つの元素から成り立つという思想で、五臓(肝心脾肺腎)や五味などのように、さまざまな要素を5つに分け、それぞれの元素が調和を保つことで健康を維持できると考えられていました。もし「肺」に不具合があれば、それに相当する「辛」の食材を採るようにするといった具合です。この食養生の概念が、漢方薬の処方にも受け継がれています。
 中国では古代より「導引術」と呼ばれる運動療法も生まれています。その流れを汲んで今でも実践されているのが、気功や太極拳です。食養生や運動療法など、遠い昔に生まれた理論や手法が現代医学にも通用しているという事実は、非常に興味深いお話です。

生薬の配合によってさまざまな効果を発揮(漢方薬について)

 次に、定形先生のお話は漢方薬の特長に及びます。漢方薬は、植物、動物、鉱物など天然の素材(生薬)で構成されています。生薬には、毒性が少なく長期服用でき、生命を養う目的の「上品(じょうほん)」、体力を養うことを目的とする「中品(ちゅうほん)」、有毒ではあるものの治療薬として効果を発揮する「下品(げほん)」があり、「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」と呼ばれる医書で分別されています。たとえば、食材としても使われる人参(にんじん)や胡麻(ごま)は上品、風邪薬として有名な「葛根湯」に使われている芍薬(しゃくやく)、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)は中品です。
 漢方薬は、生薬の組み合わせや配合割合によって相乗作用や反発作用が起こり、効果を高めたり、副作用を抑制したりすることができます。たとえば、7つの生薬からできている葛根湯は、発汗によって発熱を抑え、肩こりや頭痛の改善にも効果を発揮します。葛根湯に使われている桂皮(けいひ)と麻黄は、組み合わせると発汗作用が高まり、芍薬と甘草(かんぞう)が一緒になることで鎮痛作用を高めることができるのです。生薬の組み合わせや配合による効果や副作用、治療概念は、3世紀には医書「傷寒論(しょうかんろん)」にまとめられ、現代の漢方医学の原典となっています。

体質や症状に合った漢方薬を服用することが重要(漢方薬の使い方)

講師の定形綾香先生 さまざまなメリットのある漢方薬ですが、服用には注意が必要です。漢方医学では、比較的体格がよく体力がある人を「実証」、体力がなく身体の線が細い人を「虚証」とし、処方判断のひとつの指標となります。同じ症状でも、虚証の人に効く漢方薬を実証の人が服用すると、かえって症状が悪化する場合があるので、体質に合った薬を服用することが大切です。
 症状によって処方される漢方薬もさまざまです。風邪の初期症状で熱があり、寒気と頭痛がある場合は「葛根湯」を処方しますが、鼻水・鼻づまりがひどい人には「小青竜湯」、熱が下がった後に咳が止まらない場合は「麦門冬湯」などを処方します。
 ここで定形先生が取り上げた、冷え症の3つのタイプに対する処方例をご紹介します。
 手足が冷え、冬にはしもやけができてしまうような方は、血液循環が悪くむくみがあると考え、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 」。食が細く胃腸が弱い方で全身が冷えるタイプは、エネルギー不足と考え「真武湯(しんぶとう) 」。睡眠不足やストレスが強く、手足は冷えるものの顔がほてってしまうようなタイプには、血液循環のバランスが崩れていると考え、「加味逍遙散(かみしょうようさん) 」が有効な場合が多いそうです。

検査で異常が認められない症状に効果を発揮(漢方薬の使い方)

 最後に、漢方薬が効果的なのはどういったケースか具体的に見てみましょう。
 82歳のAさんは、夏バテで数ヶ月にわたる疲労感と食欲不振に悩んでいました。Aさんは、常に疲れやすくよく微熱が出るそうで、10年も不調が続いていると言います。そこで「補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 」を服用してもらったところ、2週間で疲労感が緩和し、お通じが改善しました。更に、1カ月で食欲不振が改善。その後も数ヶ月にわたる服用の結果、次の冬は風邪を引くこともなく、翌年の夏も問題なく乗り越えることができたそうです。
 次に、79歳、高血圧・高脂血症で治療中のBさんのケース。Bさんは、治療中に風邪を引いてしまったものの、西洋薬を服用すると胃腸の調子が悪いと悩んでいました。そこで、「香蘇散(こうそさん) 」を処方したところ、症状が改善しました。
 このように漢方薬は、西洋薬では改善できない症状や、複数の症状改善に効果的です。がんや高血圧など、検査で異常が認められるような疾病に対して強いのが西洋薬。検査しても異常がないにも関わらず体調が悪いといった場合、たとえば、月経不順、肩こり、更年期障害、ストレスによる動悸などに漢方薬は威力を発揮します。現在の医学ではどちらも使われているので、両方のいいところを活かせれば、非常に有効な治療が可能でしょう。

講師プロフィール

定形 綾香(さだがた あやか)先生
ダイナメディカル根津クリニック 院長
東京大学医学部 大学院博士過程終了。東京大学医学部附属病院アレルギーリウマチ内科入局。都立墨東病院の女性外来開設に携わった後、根津クリニックを開業。
確かな診断・治療を行うとともに、精神面や生活スタイルも考慮した治療をモットーとしている。

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