QLife漢方が、『漢方薬』の効果や効能、医学的・科学的情報を、わかりやすくお伝えします。

新規会員登録

第14回市民公開漢方セミナー「漢方が、あなたのためにできること」

[漢方ニュース] 2011/12/22

講師の熊谷由紀絵先生 11月28日(月)、浜離宮朝日ホールにて、日本漢方生薬製剤協会主催による第14回市民公開漢方セミナーが開催されました。講師は横浜朱雀漢方医学センター・センター長の熊谷由紀絵先生。
 日本で年々増えている漢方薬の使用量。現在では、全国の約9割の医師が漢方薬を処方しています。身近になった漢方について、私たちはどのように付き合っていけばよいのか、講演の概要を紹介します。

体のバランスを整えるのが漢方の役目

 まず熊谷先生は、ある男性の例をあげました。
 48歳男性会社員。生真面目で仕事熱心なこの男性、血圧が155/90、深夜帰宅が多く、酒量も多い。疲れが取れずに悩んでいたところ、薬局で薬用酒を勧められる。このおかげか普段からの悩みだった胃もたれも解消し、疲れもいくらか良くなったように感じた。漢方が体に合っていると思ったこの男性は、この薬用酒に加えて、補中益気湯(ほちゅうえっきとう) と漢方系のサプリメントも合わせて服用を開始した。3種類も飲んでいれば元気になるだろうと思っていたのに、数か月後男性は血圧が190/105まで上がり、頭痛や動悸にも悩まされるようになった。
 体調をよくしてくれるはずの漢方でなぜ逆に体調を崩してしまうことになったのでしょうか。これには漢方の特徴を理解する必要があります。漢方は「体のバランスを崩すことから病は起きる」と考えられています。そのため、弱いものは補い、強いものは抑えて中間の状態にすることを目的としています。虚弱体質の人、体力が一時的に弱っている人は「虚証」、体力的に充実している人を「実証」と呼び分けています。虚証の人は必要なものが足りない状態なのでそれを補い、実証の人は、不必要なものを溜めこんでいる状態なのでそれを外に出す漢方を用います。
 この男性が体調を崩してしまったのは、元々が実証、つまりエネルギッシュな方だったことが考えられます。疲れは一時的なものであったのに、補う成分が多く含まれている虚証向きの生薬、この場合は朝鮮人参を服用し続けた結果、頭痛や動悸、血圧の上昇などの症状が出てしまったのです。

西洋薬にはない効果

 漢方を服用する上での一番の注意点は、自分で選ばず、必ず医師など専門家の処方を受けること。自覚症状だけで選ぶと先に挙げた男性のように体調を崩してしまう原因に。また、年代や季節などで体はダイナミックに変わること、薬が合わない場合の判断が難しいことも理由のひとつに挙げられます。また漢方にも副作用があります。それは先の場合のように使い方を間違えた場合はもちろんですが、正しく使っていてもじんましんなどのアレルギー反応が起きる場合があります。漢方の服用には、専門的知識を持った医師や薬剤師との二人三脚が必要不可欠なのです。
 服用を間違わなければ、漢方は生薬が成分なので長く飲み続けられるものが多いという安心感があります。また、西洋薬では手の届かないところに対処してくれるという利点もあります。たとえば血圧降下剤を飲んで血圧が安定しても動悸や頭痛が治まらない場合、喉に何かつかえている感じがするのに検査をしても異常が見つからない場合、などに効果が期待できます。

健康を司る食事に気をつける

セミナー写真 このように漢方は私たちの健康を助けてくれる存在ですが、その前に自身でも健康を守る生活を送る必要があります。健康の基本は食欲、睡眠、便通の3つ。先生からは食に関してのアドバイスもありました。
 まず旬の食材を選ぶこと。次に水分の多いもの、体を冷やすものを食べすぎないこと。特に冬場、暖房のきいた室内でアイスを食べたり、飲み会でビールを大量に飲んだり、パイナップルやバナナなど南方系の果物を摂ったりしては、体を強烈に冷やしてしまいます。
 また冬は乾燥で口が渇くので水分をたくさん摂取してしまいがちですが、夏と違い汗をかきにくいので体自体は水分を欲してないことが多くあります。冬は緑茶などでうがいをする程度にとどめ、水分を体内に摂り込みすぎないよう注意したいものです。
 さらに朝食は抜かないこと。朝のエネルギー補給がないと、栄養バランスが崩れ、疲れやすく太りやすい体になってしまいます。便秘や冷え性になりやすいのも朝食抜きの体。旬の食材を使った食事をしっかり摂り、体を温めること。その上で何か不快な症状が出た場合は医師などと相談して漢方を服用する。こうしたライフスタイルが、自身の健康を守ってくれる手助けとなるのです。

現代人におすすめの漢方薬

 食欲不振には、<虚証>補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、<虚証>六君子湯(りっくんしとう) 、<実証>大柴胡湯(だいさいことう) 。胃の痛みには、<虚証>安中散(あんちゅうさん) 、腹痛には<虚証>大建中湯(だいけんちゅうとう) 、過敏性などの下痢には<虚証>桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) 。胸やけには<実証>半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) などが考えられます。
 続いてココロの不調の場合。イライラや不眠には、<虚証>抑肝散(よくかんさん) 、<虚証>加味逍遙散(かみしょうようさん) 。<実証>柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) には、更年期に起きる「わけもなくイライラ」の症状を抑える効果があります。ストレスで喉が詰まったような感じがしたり、胸が苦しくなる場合には<虚証>半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) を、不安になったり落ち込んでしまうような場合は<虚証>加味帰脾湯(かみきひとう) などが適しています。

講師プロフィール

熊谷 由紀絵(くまがい・ゆきえ)先生
横浜朱雀漢方医学センター センター長
日本東洋医学会専門医・日本麻酔科学会認定医
産業医科大学医学部卒、麻酔科入局。新日鉄八幡製鉄所病院、国立小倉病院などに麻酔科医として勤務。
その後、財団法人神奈川県予防医学協会産業保健部主任、医療法人養光会ベイサイドクリニック副院長を経て、
平成17年より横浜朱雀漢方医学センター、センター長就任。

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

読者の感想:この記事は参考になりましたか?

とても参考になった まあまあ参考になった 普通だった 参考にならなかった
81% 14% 0% 5%
一言感想
この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。