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女性に多い不定愁訴(ふていしゅうそ)、ご存じですか

公開日:2011.02.18
カテゴリー:漢方ニュース

 毎年3月1日から8日は「女性の健康週間」。全国各地で無料健康セミナーなどが行われ、女性が明るく充実した日々を過ごすためのヒントを学べるチャンスです。日本産科婦人科学会の清水幸子先生に、この運動についてご紹介いただくとともに、多くの女性の悩み=不定愁訴(ふていしゅうそ)について、お話を伺いました。

「女性の健康週間」とは


(社)日本産科婦人科学会・総会副議長・
「女性の健康週間」委員会委員長
清水幸子先生

 産婦人科医が女性の健康を生涯にわたって総合的に支援することを目指し、2005年に(社)日本産科婦人科学会と(社)日本産婦人科医会がスタートさせた運動で、日程は、ひな祭りの3月3日と「国際女性の日」の3月8日にちなんでいます。2008年からは厚生労働省も主唱する国民運動として、多くの自治体や関連団体がイベントや無料健康相談などを開催するようになりました。今年も、各地で無料の市民公開講座などが開催されたり、「女性の生涯健康手帳」が配布されます。詳しくは、(社)日本産科婦人科学会のホームページでご確認ください。
 女性が健康でいきいきと美しくあるためには、ご自分のカラダに関心を持ち、女性特有の病気に関する正しい知識や情報を持って、一生の様々な状況に対応し得るエネルギーを高めることが大切です。女性は、娘・妻・母として、つい自分の健康を後回しにしがちですが、家族全体のヘルス・プロバイダー(健康管理者)として健康であることは社会全体の活性とQOL(Quality of Life:生活の質)向上につながることでしょう。私はよく「自分の健康の主人公は、あなたですよ」と言うのですが、日頃からご自身の体調にもっと注意を払って、良い意味で私たち産婦人科医を「生涯にわたる女性の主治医」として活用して頂きたいと思います。

「不定愁訴(ふていしゅうそ)」って何ですか


 動悸やのぼせ、頭痛、不眠など人によって内容は様々ですが、自律神経系が関与する自覚症状があり、しかもその症状が、字のごとく「定まらない秋の心」のように変化します。原因を検査で特定できないことも珍しくありません。
 QLifeとWoman Exciteの共同調査では、そうした不定愁訴に悩む女性の「5人に1人しか医師に相談したことがない」というデータが出ていますが、これは大変残念ですし、心配なことでもあります。
 なぜなら、不定愁訴の背景に、器質性疾患(きしつせいしっかん:内臓など体の組織に異常が生じて起きている病気)が隠れていることがあるからです。
 例えば「疲れやすい」。誰にだってダルい、疲れたなあ、という時はあると思いますが、女性の「疲れやすい」は貧血(鉄欠乏性貧血)を伴っているケースが珍しくありません。鉄欠乏性貧血の主な原因には、「過剰ダイエットや食事の偏りで、鉄分が不足」「胃潰瘍などで、うまく栄養を吸収できない」「月経中の出血量が多い(過多月経)」と3つのパターンがありますが、過多月経の原因に子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)が存在している場合があります。子宮筋腫は、30歳以上女性の20-30%にみられる病気ですが、すぐに対処が必要な場合もあるので注意したいものです。

治療法がないわけではない、選択肢の一つは漢方

 不調があったら、まずは医療機関を受診しましょう。医師に相談しない理由の第一位が「病気ではないのに、この程度の理由で病院に行くべきでない」だったようですが、先ほど言ったように器質性疾患が隠れている場合があります。原因の病気がある場合は、検査をすれば早期発見や治療につながりますし、特に大きな異常がなくても「ひとまず安心する」ことで症状が軽快することも多いのです。
 また「検査で異常なければ、医師は何も対処できない」と誤解している人もいますが、そうではありません。例えば漢方という選択肢があります。特に、月経周期やホルモンバランスに伴って起きやすい女性特有の症状の改善に漢方治療は効果的であり、産婦人科医には漢方治療に積極的な医師が少なくありません。漢方薬もけして副作用がゼロではありませんが、西洋薬よりも受け容れやすいなと思う女性は、漢方治療について医師と相談してみるのが良いと思います。
 女性は、体に心配があっても、友達同士のおしゃべりで「きっと大丈夫よ」「そうよね!」と自分を安心させてしまうところがあります。でも不定愁訴で現実にツラくて、調査にあったように「仕事の効率が平均30%も落ちる」のならば、ご本人にとっても社会にとっても、大きな損失です。ぜひ解決への一歩を踏み出してください。

かかりつけ医を持つメリットは、いろいろ

 それでも「不定愁訴だけでは、病院に行きにくい」という心情はわかります。そんな人にこそ是非お奨めなのは、「かかりつけ医」を持ちましょう、ということです。気心が知れた医師の方が、何かと質問しやすくなるからです。
 それに「日頃からカラダに関心をもつ習慣がつきやすい」「正しい医学情報を確認しやすい」という2つのメリットがあります。前者でいえば、先生と会話する際にはきっと月経周期を聞かれるでしょう。でも意外に、月経周期の数え方を知らない人は多いのです。生理が始まった日から数えるのが正しいのですが、終わった日から数えたり。女性としての体のリズムを、正しく把握することは大切です。
 もう一つの、「正しい医学情報を確認しやすい」というのは、インターネットが発達した時代ならではですね。勉強しやすくなった半面、間違った健康情報にも触れやすくなりました。いつでも相談できる専門家がいることは、とても大切なことです。

ストレスとうまく付き合うコツ

 不定愁訴の原因としてよく挙げられるのが「ストレス」です。「ストレス」とは何かというと、「外からの刺激」がうまく内面で消化できずに曲がった状態になってしまったものです。ところが「刺激」は通常、良い面と悪い面があって、たとえば「明日までにやり終えなければならない約束」は、苦しさを生む反面、「仕上げることで誰かが喜んでくれる」という良い刺激はその人の社会的な存在意義の証明でもあります。だから何でも簡単にストレス、ストレスと嫌わずに、少し見方を変えて、違う面を見てみましょう。
 逆に、「健康的な習慣」もストイックになり過ぎるとストレス要因となって、不健康です。毎朝の体重計に一喜一憂したり、苦しいジョギングを欠かさず頑張るのではなく、無理せず自分にあったペースを心がけることが大切です。

清水幸子 (しみず・ゆきこ)先生
(社)日本産科婦人科学会総会副議長、同「男女共同参画検討委員会」副委員長、同「女性の健康週間」委員会委員長
医療法人鉄蕉会 亀田メディカルセンター 主任産婦人科部長
医学博士 、産婦人科専門医
1982年3月 昭和大学医学部 卒業
昭和大学大学院医学研究科卒業後、医学博士、産婦人科専門医
1900年7月 米国留学 
1994年1月 昭和大学産婦人科学教室 講師
2002年6月 亀田メディカルセンター主任産婦人科部長に就任

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