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【茵ちん蒿湯】肝切除術における虚血‐再灌流障害の軽減効果/論文の概要

[河合清貴先生]

論文の概要

<論文タイトル>
漢方薬・茵ちん蒿湯は、ラットの肝臓において、肝虚血‐再灌流ストレスとそれに続く肝切除術に対し、有益な作用を発揮する
Inchinkoto, an herbal medicine, exerts beneficial effects in the rat liver under stress with hepatic ischemia-reperfusion and subsequent hepatectomy
Kawai K, et al. Ann Surg. 2010; 251: 692-700.
目的
70%肝切除とそれに伴う虚血‐再灌流に対する、茵ちん蒿湯の有益な作用を検討する。
方法
ウィスターラットを以下の3群にわけて検討を行った:
1)
Hx群(肝切除にあたり虚血‐再灌流をしない群):手術日前3日間、精製水(茵ちん蒿湯と比較するために、茵ちん蒿湯投与時に溶かす水のみを使った)を投与し、手術時には、まず単純開腹術を行い、15分後に70%肝切除を行って1時間後に屠殺した
2)
IRHxV群(肝切除にあたり虚血‐再灌流をした群):手術日前3日間、精製水を投与し、手術時には、まず肝十二指腸靭帯を鉗子でクランプ(挟むこと)して肝動脈および門脈系の血流を一時的に遮断し、15分後に70%肝切除を行って、鉗子を外して血流を再開してから、1時間後に屠殺した
3)
IRHxK群(茵ちん蒿湯を投与してから、肝切除にあたり虚血‐再灌流をした群):手術日前3日間、茵ちん蒿湯(体重1kgあたり1gまたは2g)を投与し、手術時には、まず肝十二指腸靭帯を鉗子でクランプして肝動脈および門脈系の血流を一時的に遮断し、15分後に70%肝切除を行って、鉗子を外して血流を再開してから、1時間後に屠殺した

上記3群について、屠殺後に、残存している肝臓での血漿トランスアミナーゼ値と炎症性サイトカインおよびiNOS(誘導性一酸化窒素合成酵素)の遺伝子発現を検討した。さらに、抗酸化物関連遺伝子の発現もPCRアレイ法で評価した。

別の実験として、虚血‐再灌流による傷害がもたらす死亡に茵ちん蒿湯がどのように影響を与えるかを検討するために、上記と同じ方法(IRHxK群は茵ちん蒿湯2g/体重1kgのみ)で、虚血時間を15分から30分にのばし、血流再開後7日間観察して死亡率を比較した。

結果

IRHxV群では、残存している肝臓の血漿トランスアミナーゼ、炎症性サイトカイン遺伝子発現、iNOS遺伝子発現、ニトロチロシン(酸化物質)形成のすべてが、Hx群に比べて有意に増加していた(p<0.05または<0.01)。手術前に茵ちん蒿湯を投与したIRHxK群では、このIRHxV群で見られた増加が、すべて有意に低下していた(p<0.05または<0.01)。PCRアレイ法で検討した抗酸化物関連遺伝子発現は、IRHxV群に比べてIRHxK群で高かった。

30分間の虚血‐再灌流での検討においては、手術7日後のHx群の生存率は100%、IRHxV群では36%であったが、IRHxK群では79%で、茵ちん蒿湯は30分間の虚血‐再灌流による死亡を減らした。平均生存期間でみると、IRHxV群は2.6±0.9日であったのに対してIRHxK群は5.14±0.79日と、有意に長かった(p<0.05)。

結論
手術前の茵ちん蒿湯投与は、肝切除術に伴う虚血-再灌流を行った場合の残存肝臓において、抗炎症作用および抗酸化ストレス作用を介して、有益な効果をもたらす可能性が示唆された。

2010/08/05

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