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女性の頭痛に有効な漢方薬は?

公開日:2017.08.22
カテゴリー:症状別得意分野

女性の頭痛

 頭痛は体調不良やストレスなどが原因で引き起こる現代病です。
 最近ではスマートフォン、パソコン操作などによる長時間のうつむき姿勢から引き起こる緊張型頭痛も増えてきました。
 慢性的な頭痛を訴える人は、男性より女性の方がはるかに多いと言われています。仕事や、家事、育児で忙しい女性にとっては、最も身近で悩ましい病気と言えるかもしれません。
 婦人科医として、これまでたくさんの女性患者さんと接してきましたが、持病に頭痛があると訴える方の多くが、日頃、足のむくみにも悩んでいる傾向があると感じています。女性に多くみられるこれらの疾患は、女性ホルモンのバランスが影響していると考えられます。

頭痛と月経前症候群(PMS)の関連

 生理のリズムは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンの分泌により生まれます。
 それらのホルモンの変動で引き起こる頭痛は「月経関連片頭痛」と呼ばれ、生理になる2~3日前から片頭痛がおこる人もいれば、生理が終わってから発症する人もいるようです。
 月経関連片頭痛は、脳血管の拡張に伴い引き起こすため、例えば、むくみやすい症状があって生理前に頭痛が出る場合は、体の中の水分を調整してくれる五苓散(ごれいさん) を。また、ストレスなどが原因で血流が滞ってしまうことで発症する緊張性頭痛の場合は、血液の循環を良くしてくれる加味逍遙散(かみしょうようさん) などを試してみると良いかもしれません。このように原因によって対処法が異なってきます。体内の正常な水分・血の巡りを意識し、心がけることで、月経関連片頭痛は大分おさえられてきます。体質改善のために、自分にあった漢方を取り入れてみるのも良いかと思います。

妊娠と頭痛

 妊娠中は、妊娠維持のために女性ホルモンが著しく多くなるため、自律神経の乱れから頭痛を起こすことがあります。赤ちゃんへの影響を考えると、自己判断で市販の頭痛薬を服用することはオススメできません。「なんとなく頭がすっきりしない、だるい」といった不調は妊娠中によく起こります。このような症状の妊婦さんには、五苓散が合う方もいらっしゃいます。
 また物理的に、お腹を支えることで肩や首周りの筋肉が硬くなり、血流が悪くなってひき起こる頭痛には、血行を良くする葛根湯(かっこんとう) を、処方したりします。
 ただ、妊娠中の身体は通常時に比べ大変デリケートなので、漢方薬といえども、薬の服用には注意が必要です。必ず、かかりつけの産婦人科医へ相談しましょう。

中年期、女性ホルモンバランスによる頭痛

 中年期、閉経前の卵巣は機能がだんだんと低下してきているため、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが十分に分泌されなくなります。そのために自律神経が乱れ、頭痛が引き起こされるとされています。
 イライラからくる頭痛や入眠困難・不眠による頭痛には加味逍遙散が合う方も多いようです。加味逍遙散は更年期障害でもとてもよく使われています。

漢方薬は体質改善に有効

 頭痛は、さまざまな要因から起こります。
 即効性のある鎮痛剤に頼るばかりではなく、女性ホルモンを整えることで、頭痛を招きにくい体質に変えていくことが大切です。
 漢方を日々の生活に取り入れることにより、辛い頭痛が改善された患者さんをたくさん診てきました。漢方は続けていくことで、効果が現れます。ご自身にあった漢方と、気長に付き合い、辛い頭痛から解放されるように体質改善が出来れば良いかと思います。

女性の頭痛にこの漢方

葛根湯(かっこんとう) 「頭痛」「肩こり」「カゼのひき始めの寒気」のある比較的体力のある人に。
五苓散(ごれいさん) 「頭痛」「めまい」「むくみ」「吐き気」「下痢」があり、口が渇いたり、尿量が少なかったりする人に。
加味逍遙散(かみしょうようさん) 「頭痛」「倦怠感」「イライラ」「不安」があり、体力がなくて虚弱体質、疲れやすい人に。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう) 「繰り返し起こる頭痛」「頭痛をともなう吐き気」があり、手足が冷えやすく、体力が中等度・虚弱の人に。
釣藤散(ちょうとうさん) 「頭痛」「めまい」「のぼせ」があり、体力が中等度の人、中年以降で血圧が高い人に。

 しかし、よく誤解されているのですが、漢方薬にも飲み合わせによっては副作用が出る場合も考えられます。大切なことは、自己判断で漢方を選ぶのではなく、漢方のことをよく理解している医師に相談をし、どの漢方が自分に適しているのかを、きちんと診断してもらいましょう。頭痛は軽視できない重大な病気の危険信号でもあるので、自己判断だけではなく、検診などを定期的に受けることをお勧めいたします。

中島由美子先生
平レディースクリニック 院長
(社)日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

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