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下痢などに悩む“風が吹いたら飛ばされそうな”痩せ過ぎの30代男性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2014/03/25

下痢などに悩む“風が吹いたら飛ばされそうな”痩せ過ぎの30代男性

 30代の男性が、下痢と下腹部の張り、脚のむくみのために来院した。少し食べ過ぎるとすぐに下痢してしまい、普段から便も緩く、形のあるような便がほとんどないそうである。また、食べてもすぐにお腹いっぱいになってしまうので太れないらしい。便通は毎日あるが下腹部が張るとのこと。患者さんの見た目のイメージは、少々表現が悪いかもしれないが“紙のように薄くて風が吹いたら飛ばされそうな感じ”。
 便秘と下痢を繰り返す場合には過敏性腸症候群を考え、その治療によく使われる桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) を処方するが、この患者さんは便秘がなく慢性的に下痢もしくは下痢に近い状態である。そこで消化機能全般を良くしてくれる効果が期待できる六君子湯(りっくんしとう) のエキス剤を、1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。すると2週間ほどで下腹部の張りが改善し、下痢の頻度が低くなってきたと言う。また2週間後に再診すると、今度は下痢も落ち着き、脚のむくみがとれたとのことであった。
 脚がむくむ原因は沢山あるが、そのうちの1つに低タンパク血症がある。簡単に言えば栄養失調の状態だ。摂取している栄養が足りない場合もあるし、体が必要としている栄養が異常に多い場合もある。この患者さんの場合は食べてもすぐにお腹いっぱいになってしまい、十分な栄養が摂れていない可能性がある上に、慢性的な下痢のため、必要な栄養まで排泄してしまっている可能性がある。そのため、脚のむくみの原因は低タンパク血症によるものが最も考えやすい。血液検査をしていないので、本当に低タンパク血症かどうかは不明だが、脚のむくみが解消したのは、下痢が少なくなったことで栄養状態が改善したためではないだろうかと考えている。
 その後、おおむね調子が良い状態で六君子湯の内服を続けていたが、あるとき「最近また下痢が多くなってきた」と言われた。体質が変わると同じ薬が効きにくくなることは良くあることなので、今度はエキス剤の小建中湯(しょうけんちゅうとう) を1回5グラム1日3回毎食前に処方した。2週間後、明るい表情で診察室に入ってくると「今回の薬はとっても調子が良いです。この方が前のよりも合ってそう」と大喜びしてくれた。小建中湯とは虚弱体質の方に用いることのある薬である。胃腸の調子が優れず食べてもお腹いっぱいになりやすく、またすぐに下痢をしてしまうような方に処方する。六君子湯よりももっと弱々しい方に処方するイメージで用いている。今回の患者さんの場合、始めは六君子湯で調子良く見えたがやはり症状が残っており、小建中湯が必要なくらい弱々しい状態であったようである。
 以前師匠に教わった症例だが、30代の女性が体重減少と生理が来ないと言って来院した際、やはり小建中湯を処方したそうである。その方は食欲がわかずご飯の量が非常に少なかった。Body Mass Index (BMI)が12.4(基準値は22)しかなく色白でひょろひょろっとした感じの方であった。当然色々な検査は受けていたが、病気らしい病気は見つかっていなかった。小建中湯を飲むようになってから少しずつ食欲が出てきて体重がだんだん増えていった。BMI が15くらいまで改善したころから生理が来るようになったそうである。小建中湯で体に栄養がついたために、意図していない部分が改善したものと思われる。このように、“紙のように薄くて風が吹いたら飛ばされそうな感じ”の患者さんには小建中湯で栄養の改善をはかると、喜ばれることがしばしばある。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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