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耳鳴りに加えて、めまいやふらつきの症状も出た70代女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2013/11/27

耳鳴りに加えて、めまいやふらつきの症状も出た70代女性

 70代の女性が耳鳴りのために来院された。大学病院の耳鼻科に通院しており内耳障害の診断を受け内服薬を処方されている。耳鼻科の医師からは「耳鳴りは慣れるしかない」と言われたそうだが、少しでも改善したいと思って来られた。正直、漢方薬で耳鳴りをなくすことは困難である。しかし少しでも楽になる可能性のある処方を、お互い試しながら探していくことにした。
 まず、耳の症状に有効なことがあるエキス剤の八味地黄丸(はちみじおうがん) を1回2.5グラム1日3回毎食前処方した。1か月後再診の予定であったが来院しなかったので、「効かなかったんだな」と思っていた。しかし半年ほどしてその方が再診にみえた。どうやらめまいとふらつきが酷くて来られなかったそうである。耳鼻科でステロイドの内服治療などをしてようやくふらつきが治まってきていると言う。そのとき、西洋薬と一緒に処方してもらったエキス剤の半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) でめまいは楽になったらしい。めまいとふらつきが楽になってきたら今度は耳鳴りが酷くなってきたので、漢方薬の治療を再開したいと思ったとのことであった。八味地黄丸を再開し経過を見ることにした。1か月後、耳鳴りに変化はないが夜間トイレへ行く回数が少し減って、1回の尿量が増えたそうで、耳鳴りとは別に喜んでくれた。めまいは時々あると言うので、八味地黄丸に追加してエキス剤の半夏白朮天麻湯を症状が有るときに内服するよう頓服で処方した。当然、耳鼻科の内服は継続している。
 3か月ほど経過した頃、「めまいも耳鳴りも落ち着いているので漢方薬を止めている」とのことであった。6か月して再びめまいと耳鳴りで来院。風邪をひいたあとからめまいが悪化、耳鳴りも気になると言うがめまいの方が辛いと言うので、まずは辛いめまいの方をターゲットに治療し、めまいが改善したら耳鳴りの方を治療することにした。以前めまいに効果があったエキス剤の半夏百朮天麻湯を1回2.5グラム1日3回毎食前処方した。2週間後再診すると「めまいはすっかり良いです」とのこと。しかしめまいが良くなったら耳鳴りがより大きくなったような気がするという。半夏白朮天麻湯を中止するのは不安だと言うので、八味地黄丸と半夏白朮天麻湯を1日3回併用してもらうことにした。本来、漢方薬は併用すると効果が弱くなってしまうことがあるので、1種類の内服にしておくことが理想的ではあるが、本人の希望が強かったために併用することにした。1か月後「そこそこ調子いいです」とのこと。めまいはなく耳鼻科でもらっているめまいの薬は飲んでいないという。耳鳴りは依然残っているものの、「以前よりは小さくなってきている気がする」と言ってくれている。また、1日3回ではなく1日2回内服しているそうである。この方のように患者さんが自分に合った飲み方を探してくれることは非常に大切である。医師が処方した通りに内服して効果が実感できるならそれで良いのだが、「良さそうだけどもう少しなあ」と思う時は色々試して自分に合った飲み方をしてもらった方が効果が高まることがしばしばある。この患者さんの場合、めまいについてはほとんど感じなくなっている。しかし、残念ながら耳鳴りについては良くなったり悪くなったりを繰り返している。やはり耳鳴りは難しい。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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