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原因不明の胸苦しさに悩む60代男性

公開日:2013.10.30

原因不明の胸苦しさに悩む60代男性

 前胸部(胸の前側)に痛みや拘扼感(こうやくかん:押さえつける感じ)、息苦しさや違和感がでる病気は沢山ある。狭心症や心筋梗塞(心臓を動かしている血管が細くなったり、つまったりする病気)、肺梗塞(肺へ行く血管がつまってしまう病気)といった命に関わる病気もあるし、逆流性食道炎(胃酸が食道に逆流して、食道がただれてしまう病気)のように直ぐに命に関わることは少ない病気など色々である。症状があれば病院へ行き検査を受け、治療が必要な病気が見つかれば治療を受ける。しかし検査は色々受けたもののはっきりとした病気が見つからないこともしばしばある。患者さんとしては症状が有るのだが、医者としては病気が分からないので治療が困難なことが多い。
 来院した60代の男性はまさにそんな患者さんであった。時々、夜寝ている時などに急に胸苦しくなったり、胸の前が「ぎゅーっ」となるという。高血圧症と脂質異常症があるので、心筋梗塞や狭心症を心配して循環器の専門の先生に診てもらったが、全く異常な所はないと言われたそうである。大掛かりな治療をしなければならない病気がなかったことには安心したものの、やはり症状があるのが気にかかるという。困った症状が有るにも関わらず、はっきりとした病気の診断がない場合は、漢方薬に挑戦してみる価値はある。
 胸部の違和感や痛み、押さえつけられる感じ、息苦しさなどがある際に当帰湯(とうきとう) が有効なケースがあるので、エキス剤の当帰湯1回2.5グラム1日3回を毎食前処方した。1か月後再診してもらうと、患者さんが笑顔で診察室に入って来られた。もともと毎日症状があった訳ではないが、この1か月は一度も症状がなかったと言う。「こんなに長い期間症状がなかったことは最近なかった」とのことであった。また3か月後に再診したときには「飲み始めてから本当に楽だ。2回くらい症状が起こりそうになったけど、予兆みたいなものだけで実際に苦しくはならなかったよ」と喜んでくれた。漢方薬のために症状がなくなったのか、たまたま症状が出なくなったのかは不明であるが、安心のために今でも服用を続けている。
 この患者さんのように、安心のために漢方薬を飲んでいる人は少なくない。西洋薬と比べると比較的安価なものが多く、また重大な副作用は少ないからだろう。そして何よりも患者さん自身が「飲んでないときよりは飲んでいるときの方が楽だ」という実感を少しでも持ってくれているからだと思う。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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