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2か月前から痛みを伴う脚の腫れが引かない40代女性

公開日:2013.10.16

2か月前から痛みを伴う脚の腫れが引かない40代女性

 脚が腫れる病気といえば深部静脈血栓症(筋肉の奥深くにある静脈が血栓でつまった病気)、リンパ浮腫(リンパ管(静脈とは異なり、リンパ液という体液を心臓に返す管)が何らかの原因でつまった病気)、峰窩織炎(ほうかしきえん)、静脈うっ滞性皮膚炎(下肢静脈瘤や深部静脈血栓症などが原因で、静脈血が十分に心臓の方へ返れず淀むことによって起きた皮膚炎)、心不全、肝硬変など沢山ある。それぞれ固有の治療を行うが、圧迫治療はどれにも共通するとても大切な治療である。
 40代の女性が「2か月前から脚が腫れている」と他院から紹介されて来院した。膝下が腫れ、赤くなって熱を持ち、痛みを伴っていた。はじめ近くの皮膚科にかかり峰窩織炎と言われた。峰窩織炎とは水虫や虫刺され、怪我、ひどい皮膚炎などからバイキンが侵入して皮下脂肪に炎症が起きる病気である。峰窩織炎の治療は安静、抗生剤投与などが中心になる。この方にも抗生剤の点滴や内服薬の治療が施されたが、一向に改善しないとのことであった。そこで峰窩織炎以外の脚の腫れる病気を検査することにした。静脈うっ滞性皮膚炎については、下肢静脈瘤と深部静脈血栓症を超音波で検査したが、両方とも認められなかった。また、内科の病気からくる脚の腫れ(心不全や肝硬変など)も見つからなかった。リンパ浮腫については診断が非常に困難な病気であり、脚の腫れ方からリンパ浮腫を疑い、静脈の検査で問題がなければリンパ浮腫の可能性が高いとすることが多い。抗生剤が効かない脚の腫れで、検査の結果静脈や内科的な問題が無かったので、リンパ浮腫の疑いで治療を開始した。
 リンパ浮腫の治療の原則は圧迫治療である。そこで医療用の弾性ストッキング(弾力のあるストッキング)を履くように指導した。また圧迫治療と平行して、むくみの改善に役立つと思われる柴苓湯(さいれいとう) のエキス剤を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。しばらくこの2種類の治療を並行していると「脚の腫れがとれてきた」「尿量が増えている」と言う。実際、赤みが薄くなり押しても痛がらなくなった。以前30代の方で、立ち仕事が原因と思われるひどい静脈うっ滞性皮膚炎にも同じ治療をしたことがあるが、この方も同じ効果を感じていた。脚の腫れている人に柴苓湯のみを処方したこともあるが、腫れが劇的に改善した経験は無い。おそらく弾性ストッキングによる圧迫が脚の腫れを軽くし、柴苓湯が尿量を増しているものと思う。過剰な水分や、炎症が元で出た水分が皮膚の下に貯まって脚が腫れているときには、それらを取り除く必要があるが、その役割を柴苓湯が担っているのだろう。圧迫か内服かという選択よりも、両者を併用する方が患者さんに喜ばれることが多いようだ。柴苓湯を1日3回飲むと「おしっこが近くて困る」という方は飲む回数を減らすと尿量が増えすぎないので、飲む回数は自分で調節するように指導している。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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