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毎日のように頭を締め付ける痛みに悩む30代女性

公開日:2013.09.04

毎日のように頭を締め付ける痛みに悩む30代女性

 30代の女性が頭痛を訴え来院した。4ヶ月ほど前から、毎日頭を締め付けられるような痛みを感じるという。原因としてはタバコの臭い、香水の匂い、コーヒー、強い太陽の光が思い当たり、また頭痛の前兆として目がチカチカすることがあると言う。このような明らかな誘因のある頭痛は、片頭痛である可能性が高い。片頭痛は、光、匂い、音などが頭痛の引き金になることが多く、前兆として閃輝暗点(目の前がキラキラ光る感じがすること)が現れる場合がある。脳の血管が一度ギューッと締まり、それが広がるときに頭痛が起こるので、トリプタン製剤を使って脳の血管が広がるのを防ぎ、症状を緩和させる治療を行う。同時に頭痛の原因から己の身を守ることも大切である。
 この患者さんは本人が自覚できるほど明確な誘因があり、片頭痛の可能性が高いと思われた。しかしトリプタン製剤は動悸やめまい、吐き気といった副作用が出ることがあるため、まずは片頭痛に効果が高いと言われるエキス剤の呉茱萸湯(ごしゅゆとう) を1回2.5グラム、1日3回毎食前に処方した。2週後の再診時、「今まで毎日悩まされていた頭痛から数日は解放されるようになってきた」とのことであった。2ヶ月ほど経過した頃は、「頭痛は毎日起こるが、頭痛のひどさはましになっている」とのこと。また、今までトリプタン製剤を使ったことが無かったので、頓用で処方したところ、「飲むと楽になる」と言うので呉茱萸湯を中心に服用して、症状が辛いときだけトリプタン製剤を飲むようにした。呉茱萸湯を始めて8ヶ月くらいの間は、時々トリプタン製剤を飲むことがあった。しかし1年ほど続けた頃から「トリプタン製剤は余っているのでいらない」と言うようになった。時々頭が痛くなることはあるが、トリプタン製剤を飲むほどの頭痛は起こらないで過ごせているようだ。初診から3年経過した今では、3ヶ月に1回トリプタン製剤を飲む程度で過ごせている。無論、自分で出来る頭痛の予防として、化粧品売り場へ行かない、サングラスをかけるなどのことは行っている。
 余談であるが、呉茱萸湯はエキス剤のなかでもかなり苦い漢方薬だ。しかしこの患者さんは「この苦さはあまり気にならない」そうだ。薬が効くか効かないかの大事な所見の一つに、口に合うかどうかがあると思っている。「不味いけど飲める」とか「これは美味しい」と言うものは効く可能性がある。しかし「これは不味くて飲めない」と言うものはおそらく効かないのである。このように、体質と漢方薬が合っていると不味くても飲めるが、その薬が体に合わなくなると不味くて飲めなくなるという経験を時々する。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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