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両膝の痛みを訴える60代後半女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2013/06/21

両膝の痛みを訴える60代後半女性

 60代後半の女性が下肢静脈瘤のために来院された。下肢静脈瘤は軽症であり手術の適応ではなかったので、弾性ストッキング(弾力のあるストッキング)を紹介して下肢静脈瘤の治療は終了した。この方は両膝に痛みがあり、2週間に1度整形外科に通院して注射をしてもらっている。注射をしてもらうと膝の痛みが緩和されるが、時々すごく痛くなることがあるという。少しでも楽になるなら漢方薬も試してみたいと言うので、膝痛に効くとされるエキス剤の防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) を1回2.5グラム1日3回毎食前処方した。
 内服を初めて1ヶ月目に「汗が出やすくなった。膝の曲りが楽な気がする。脚のむくみが少しとれた」と言ってくれた。しかし3ヶ月ほどたったころ、「汗かきやすいのは続いている。それほど困ったことはないが、やはり膝の痛みが出る」とのこと。そこで、防已黄耆湯と併用すると、より膝痛に効果が見られるエキス剤のよく苡仁湯(よくいにんとう) を、1回2.5グラム1日3回毎食前に併用することとした。しかし1ヶ月後「よく苡仁湯はまずくてとてもじゃないけど飲めないよ」と言われてしまったので、今度はエキス剤の越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう) 1日2.5グラム(1包を適当に3分割してもらい、1日で1包内服する)を防已黄耆湯と併用してもらった。越婢加朮湯も防已黄耆湯と併用することで、膝痛をより楽にしてくれる効果のある薬だが、越婢加朮湯は生薬の麻黄を多めに含んでおり、ドキドキやムカムカが起こることがあるため少量から試してもらう必要がある。1ヶ月後再診した際に「何ともないよ。膝の痛みは変わらないけど、ドキドキしたりムカムカしたりはしない」というので越婢加朮湯を1日5グラム(2包を適当に3分割して内服)に増量した。すると今度は胃のむかつきが出現、食欲がなくなったという。食欲が落ちては仕方がないので、数日、防已黄耆湯と越婢加朮湯の内服を中止してもらうと、胃の調子が戻ったとのことであった。そこで今度は、弱々しいタイプの人の膝痛に処方する、エキス剤の大防風湯(だいぼうふうとう) を1回2.5グラム1日3回毎食前処方した。始めの数日は青臭く感じて飲み辛かったらしいが、すぐに慣れて、防已黄耆湯よりも飲みやすく感じるようになったとのことであった。2ヶ月ほど継続したところ「先生、脚のむくみがだいぶ良いみたい。あと膝も楽なのよ」と言ってくれた。膝の注射もしないで済んでいるとのことだった。
 この方は防已黄耆湯の効果にはあまり満足できていなかったが、大防風湯に変更してから感謝してもらえた。症状は改善しているが、残念ながら関節の動きは改善していない。関節の動きなどの改善には、ストレッチ(入浴中の正座の練習など)や筋トレ(ももの前面の筋肉(大腿四頭筋))が必要であり、かつ非常に効果的であるといわれている。大防風湯は「ほとんど歩けなくなり、脚がやせ細った感じの方に処方する」というイメージをもっていたが、今回の方は非常に活発な感じの方であるが、結果としては大防風湯が合う方であった。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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