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医療法人芍薬会 灰本クリニック 灰本元院長

公開日:2016.10.12
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

煎じ薬のエキスパートとして

 当院ではエキス剤と煎じ薬の両方を処方しています。26年前にはこの珍しい煎じ薬を求める患者さんが遠くからもたくさん来ていました。しかし、だんだん患者さんが増え、院内処方では対応できなくなってきたため、院外処方の薬局にしました。それが10数年前くらいでしょうか。
 煎じ薬の適応を考えてみると、例えば、ステロイド吸入+β刺激薬吸入、それにステロイド点滴治療でも改善しないような重症の喘息の方。ステロイド依存性の喘息になることもあり、ステロイドは点滴でも内服でも長くは使えません。このような患者さんへ煎じ薬を使ってみませんか、と勧めます。
 また、そういった人たちは、ストレスによって咳が悪化した場合もあります。ストレスによる咳と喘息が重なっている人もいらっしゃいます。私は、機能的疾患の半分以上には心理的要因が絡んでおり、つまり心身症の可能性があると思っています。当院では検査しても器質的疾患が見つからない機能性疾患に対して心理的な要因が疑われるときには、カウンセラーによるカウンセリングも行っています。

漢方薬が効力を発揮するのは機能的疾患

 基本的に漢方薬の効果があるのは機能的疾患※1で、器質的疾患※2には難しいと考えています。たとえば、狭心症と心筋梗塞を考えてみましょう。心筋梗塞というのは動脈硬化を起こして血管が詰まり心筋が壊死した状況です。このような器質的疾患には漢方は効きません。詰まってしまっているのだから、ステントを入れるかバイパス手術するしかありません。一方、狭心症の中には、動脈硬化がない血管に痙攣によって血管が狭くなっていることがあります。こういうケースは機能的疾患ですので、漢方はすごく効きます。
 ただ器質的疾患でも、初期の段階で漢方を始めると上手くいくことがあります。たとえば初期の関節リウマチがそうです。しかし、進行して全身の関節の変形が強くなってしまったら漢方ではなかなか効きません。初期で漢方的な生薬構成を間違えなければ、数ヶ月以内に効果が出ます。エキス薬ではこのような難しい病気へ効果を期待するのは難しいと思います。

※1 機能的疾患:組織に解剖学的・病理学的な変化や異常が見当たらないのに、その臓器や器官の働きが低下あるいは亢進し、それが原因となって生じる疾患のこと
※2 器質的疾患:内臓や器官、神経、筋肉などに、解剖学的・病理学的な変化や異常がおこって生じる疾患のこと

患者さんに教えられて、生薬の可能性を探っていく

 漢方の勉強を始めた頃、漢方不毛の地と言われていた名古屋には先輩がほとんどいなかったので、私の歩く道はなにもかも手さぐりでした。その中で百合会の医師仲間の存在と彼らと毎月一緒に26年間も長い間、漢方の勉強をできたことは心の支えとなっています。そして、中国の先生達から教えてもらった中医学をそろそろ卒業したいと思っていた頃、江部洋一郎先生の経方医学※3と出会いました。中医学、百合会仲間との多変量解析による漢方の臨床研究、それに経方理論が私の漢方の基盤となっています。ここまで来るにはものすごく大変でしたけど、生薬にはとてつもない可能性があると信じていたので、それを極めようと今でも思っています。
 まだまだ追究したいことはたくさんあります。例えば足背の冷えです。基本的には地黄などで腎の補陰をして、細辛や附子で温めると、足背の方に気が流れるはずです。顔面のほてりを合併している場合には、柴胡、芍薬などを使って膈の気の流れを調整する方法もあります。理論的には上手くいくはずなのに、そうはいかない。つまり、どこかに間違いがある。7割は正しいけれども、3割は経方理論の通りにはならない。その3割を何とかしたいんです。何かの生薬を加えるとか、例えば鍼灸でもいいけれど、気の流れを転換できるような生薬を使ったら、顔面のほてりと同時に足背の冷えも治せるはずです。上に行きすぎる気の流れを下に持っていくことができれば、気の分布の不均一によっておこるいろいろな症状が解決すると思うんです。
 他にも、なんとかしたいと思っている漢方的な疑問がたくさんあります。それは引退してから、ゆっくり楽しみながら取り組んでいきたいと思います。

※3 経方医学 漢方医の江部洋一郎氏(高雄病院名誉院長、京都市)が提唱している理論体系。漢方の古典といわれる『傷寒論』『金匱要略』の解釈を再構築した。

医療法人芍薬会 灰本クリニック

医院ホームページ:http://www.haimoto-clinic.com/

JR中央線「春日井」駅を西へ800m、弥生町交差点角、徒歩約15分。優しい色調でまとめられた待合室は、採光のため窓を広くとっており明るく開放的。可能な限り患者さんにストレスをかけない治療を提供しています。車で来られる場合は、駐車場はクリニック敷地内に18台、道路を挟んだ駐車場には28台が利用可能です。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、消化器科、循環器内科、糖尿病内科、呼吸器内科

灰本元(はいもと・はじめ)院長略歴
昭和53年 名古屋大学医学部卒業
昭和53~56年 関東逓信病院(現NTT東関東病院)内科レジデント
昭和56~61年 名古屋大学医学部第一病理学教室
昭和61~62年 愛知県がんセンター研究所
平成62~平成2年 中頭病院(沖縄市)内科勤務
平成3年 灰本クリニック開業
診療の特徴は高血圧、ローカーボ食による糖尿病治療、癌の診断、漢方、臨床心理など。

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