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ごきそレディスクリニック 小川麻子院長

公開日:2015.11.18
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

まずは漢方薬の「テイスティング」から

 うちのクリニックにみえる患者さんは、初診から漢方薬を希望される場合が多いです。当院に通院している友達に勧められたと言ってきて下さる方もいらっしゃいます。更年期で受診される方が多いので、HRT(ホルモン補充療法)をお勧めして、それでも改善しなかったり、改善してきても、新しい症状が出てしまった時に漢方薬をお勧めします。
 たとえば、ホットフラッシュが辛かったけど、それがおさまってきたら今度は便秘が辛いなど、違う症状を訴えることがあります。そういった時は、便秘がひどくてのぼせもあるなら、桃核承気湯はどうですかというようにおすすめしています。一度にたくさん薬を処方してしまうと、皆さん飲まなかったりするので、ちょっとずつ小出しにした方が、患者さんの話を聞く機会も増えるかなと思っています。
 また、漢方薬を処方する時には、患者さんに「これが合うと思います」と言って、本を見せて薬の説明をした後、お湯に漢方薬を溶かして飲んでもらいます。言わば漢方薬の「テイスティング」ですね。自分の体に合う漢方薬は甘く感じるので、患者さんにも分かりやすい。1つ飲んで「ほら、合うでしょ?」と言うと、患者さんも納得してちゃんと飲んでくれます。この手法は千福貞博先生に教えていただきました。
 それで、2週間後くらいにまた来てもらって、改善していれば同じものを出しますし、駄目だったら変えてみます。患者さんに合っているのが分かったら、患者さんの体も漢方薬を飲んでいくことで変わっていきますから、状態を見て、それに合わせて処方していくというスタイルですね。

漢方薬の多様性と奥深さ

 漢方は風邪薬から始まっていると言われています。『傷寒論』という古書が始まりです。だから風邪に対する漢方薬は、症状に合わせてものすごくたくさんあります。
 例えば、温経湯という卵巣の働きを良くする漢方薬があります。排卵障害の人にも効果を期待できますし、温めることによって基礎体温が上がり、より妊娠しやすくなるといわれています。皮膚科に行くと、その漢方薬はシモヤケの薬として出されています。血流を良くしてくれるからですね。
 他にも生理前にイライラする時によく処方しているのが抑肝散加陳皮半夏です。PMS(月経前症候群)で若い人にはピルを勧めるのですが、年齢が上がっていくと血栓のリスクが出てきますから、抑肝散加陳皮半夏を出しています。女神散や、柴胡剤も気持ちを落ち着かせる漢方薬です。お腹が張ってしまうようであれば、加味逍遥散が合います。PMSでも、症状に合わせた薬がまだまだあります。同じ患者さんでも、状態によって合う漢方薬が変わっていきます。ずっと女神散を飲んでいた人が、最近効かないから抑肝散にしてみたりなど。
 漢方は本当に面白い。これからもいっぱい勉強することがあるし、将来は『傷寒論』をもっと読みこんで、達人と言われるようになりたいですね。
 ※『傷寒論』…後漢末期から三国時代に張仲景が編纂した、伝統中国医学の古典。

患者さんと「エントレインメント」していきたい

 「テイスティング」してもらう時には、看護師さんからもどうですか?と聞いてもらっています。お湯に漢方薬を溶かして飲んでもらいますから、1~2分では飲めないので、その間にゆっくり患者さんは考えるんですね。すると患者さんは、あのことも言ってなかったな、このことも言ってなかったなと思いつきます。それを聞きすぎない程度に聞いてあげて、この漢方薬はあなたの症状に、こういう理由で向いていると思いますよと説明しています。そうやって患者さんの話を聞いていくと、最初に辛いと感じていた症状の原因が、だんだん時間をかけて分かってくるんですよね。
 そういう意味で言うと、看護師さんはじめ、院内のスタッフみんなで協力して診療にあたっていると思っています。もともと私一人では外来は回りませんし、看護師さんが患者さんの話をゆっくり聞いてくれることで、患者さんのほうも話してくれる。医院全体で患者さんと共感して、コミュニケーションを取ることを大切にしています。
 エントレインメントという言葉があります。トレイン(=電車)から来ていて、一緒に同じ電車に乗っているように相手によりそうという考え方です。一緒に良い方向に進んでいけるように、そんな心持ちでこれからも患者さんに向き合っていきたいですね。

ごきそレディスクリニック

医院ホームページ:http://www.gokiso-lc.com/

名古屋市営地下鉄桜通線:鶴舞線「御器所駅」7番出口すぐ。暖かみのある照明のもと、リラックスできる雰囲気の待合室にはキッズスペースも備えています。クリニックの2軒隣には4台駐車できるスペースがあります。満車の際はクリニックまでお問い合わせ下さい。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

産科、婦人科

小川麻子(おがわ・あさこ)院長略歴
1981年 愛知医科大学卒業
愛知医科大学病院に入局後、1989年に医学博士を取得。阪井病院、服部病院を経て、現在、ごきそレディスクリニック院長

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