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証クリニック神田院 小野真吾副院長

公開日:2015.10.21
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

祖父が病気になったときの経験から医師の道へ

 私の実家は精肉店で、子どものころは医師になろうと考えたことは一度もありませんでした。しかし高校1年の冬、同居していた祖父が病気で入院しました。そのとき、医師が家族に対して「もうあきらめなさい、治らないから」と言ったと知り、大変驚きました。私は、「そんな医療がまかり通っているなら、自分が何かアクションを起こしたい」と考え、医学部を目指しました。
 今になって思うと、その先生は表現がうまくなかっただけで、「そんなに根を詰めて看病したら疲れてしまうから、無理しちゃいけないよ」と言いたかったのかもしれません。もはや真意はわかりませんが、私はその先生のおかげで医師になったと思っています。
 また、研修時に、同期の仲間はみんな「僕は肝臓がいい」「自分は消化器」と専門を決めていくのですが、私は体の一部分にしぼることができませんでした。それで、高齢者を診る老年科に入ったのですが、研修として精神科で患者さんの話を聞くうち、患者さんの心の動きを知ることに興味を持ちました。
 よく、精神科医が冗談で「精神科は紙と鉛筆と机と、聞く気持ちがあれば治療できる」と言いますが、本当に、「もしかすると薬や手術がなくても、話を聞くだけで患者さんを元気にすることができるかもしれない」そう考えたとき、この領域をもっと学びたいと思い、精神科に移りました。その後、心だけでなく体も一緒に診たいという気持ちから、心身医学も勉強しました。

漢方との出会いは偶然参加したセミナー

 そんな私が漢方に興味を持ったのは、人に勧められ、漢方のセミナーに参加したことがきっかけでした。実は、「漢方って難しいし、よくわからない世界だ」と思っていたので、それまではあまり触れたことがありませんでした。
 ところが、そのセミナーで講師の先生が「漢方では患者さんの年齢や性別、体質などを含め、すべてを見て、その人に合う処方を考えるのです」と言うのを聞き「あっ!」と思ったのです。一般的に西洋医学では「この病気にはこの薬」と適応が決まっています。しかし、よくよく考えると、体質や性別、年齢など患者さん一人ひとりの条件はほとんど見ていません。体も心をも含め、その人全部を診る医療がしたい。自分が探していたのは、これだと思いました。
 それからは、さまざまなセミナーに参加したり、先生方のそばで勉強させていただいたりしつつ、自分の診療にも漢方を取り入れるようになりました。まさか自分が漢方に携わることになるとは考えもしませんでしたが、体と心、その人のすべてを診る医療は自分に合っていると思っています。

患者さんの話をじっくり聞き治療法を考える

 クリニックでは、患者さんの「治ろうとする力」を最大限引き出せるように、患者さんの話をていねいに聞き、生活習慣なども把握した上で診断をし、患者さんにとって最も良いと思われる医療を提供することを目指しています。
 漢方精神科では、ストレスなど精神的な要因で起こる、頭痛や肩こり、めまい、便秘や下痢、食欲不振、不眠などの体のつらい症状を、漢方薬を使って治療しています。このような症状は、西洋医学の向精神薬などではうまく治療できないこともありますが、漢方薬を用いた治療で改善することもあります。
 一方で、西洋薬による治療が必要なケースもあり、そのような場合は漢方薬と併用することもあります。また、うつ病や統合失調症など、症状が重く向精神薬による治療が必要な場合、心理療法や入院が必要な場合は、精神科の専門病院など、ほかの医療機関をご紹介しています。初診の患者さんがいらしたときは、事前に記入していただいた問診票をもとにじっくりとお話をうかがい、まずは「このクリニックで、漢方を使った治療で症状が改善される見込みがあるか」を判断しています。その患者さんに最適と考えられる場所で治療をお受けいただくことが、もっとも早い治癒につながると思いますので。

これからも「心を診る医療」を続けたい

 診療していて、漢方精神科の最も良いところは体と心、どちらも一緒に診られるところだと感じています。
 例えばストレスなどで自律神経のバランスが崩れると、便秘や下痢など消化管の不調があらわれることがあります。一般的な精神科では、普通は体の症状についての細かな診察までしませんが、漢方精神科では、心の症状も体の症状もあわせて診て、その人に合う薬を処方することで双方の症状の改善を目指します。医師として自分のできることも広がりますし、患者さんの負担も減らすことができる。それがいちばん嬉しいことです。
 実はもともと文系でしたが、先ほど話した祖父のことがあって、方向転換をしました。そのせいか医学の中でも少し文系の香りのする精神科に惹かれたのかもしれません。検査のデータももちろん大切ですが、気持ちを汲み取ること、「心を診る医療」をしたい。そして、心の悩みから発して体の不調を起こしている患者さんを漢方精神科で診ていきたいと思っています。
 それと同時に、ひとりでも多くの仲間を増やしていきたいという思いもあります。自分が多くの先生方から教えていただいた漢方のすばらしさを自分のものだけにしておくのはもったいないので、後にバトンを引き継いでいくことも考えていきたいですね。

証クリニック神田院

医院ホームページ:http://www.akashi-clinic.com/index.html

JR「お茶の水」駅御茶ノ水橋口、東京メトロ「新御茶ノ水」駅、「淡路町」駅、「小川町」駅B3b出口より徒歩5分。待合室には大きな書棚が並び、図書室にいるような気分に。随所に置かれたグリーンの植物がリラックスさせてくれます。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

漢方内科、内科、神経内科、漢方消化器内科、漢方精神科

小野真吾(おの・しんご)副院長略歴
1998年 弘前大学医学部卒業、弘前愛成会病院、弘前大学医学部附属病院、芙蓉会病院等を経て、
2003年 帝京大学医学部附属病院精神科
2006年 ハートフル川崎病院精神科
2008年 東京医科大学霞ヶ浦病院(現茨城医療センター)
2015年 証クリニック神田副院長
■所属・資格他

日本臨床精神神経薬理学会、ポールヤンセン賞学会奨励賞受賞、日本心療内科学会評議員、日本精神神経学会専門医、精神保健指定医、臨床心理士、日本医師会認定産業医

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