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うえひらウィメンズクリニック 上平謙二院長

[外来訪問] 2014/10/08

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

漢方薬とめぐりあった

 国内の全医学部で漢方医学教育が行われるようになったのは、まだ2004年頃からです。最近では、漢方医学の独立した講座を持つ大学も増えてきましたが、僕を含め多くの医師は、学生時代に薬理学や内科学の一部として漢方薬のことを学んだ程度です。現在でも、医師国家試験の内容で漢方薬に関するものはほとんど出題されません。それに、診療に積極的に漢方薬を取り入れている医師はまだまだ少数派です。
 漢方医学は用語も理論も難解で、経験学問的な要素も多く、初めから独学するのは難しい学問です。医学部卒業後は学ばなくてもそれなりにやっていける漢方というものを、使える医師になるかどうかは、めぐり会いのような要素が大きいと思います。派遣先などで漢方を実践している先輩や同僚に出会って感化されたり、受け持ち患者の治療法を調べているうちに興味を持ち、実際の効果に魅了されたりと、私自身、漢方薬を使うようになったのは、こういっためぐり会いがあってのことでした。

患者さんを総合的に診る漢方医学

 西洋医学では、まず、感染なのか、毒物なのか、炎症なのかなどの病態の原因を突き詰め、根本原因を解決していくという方法が原則です。なので、原因が特定できなければ最終的な診断ができず、適切な処方も難しくなります。そうなれば、対症薬として、痛いなら痛み止め、吐き気がするなら吐き気止め、とりあえず抗生剤、眠れないなら精神安定剤か睡眠薬、うつかも知れないから抗うつ剤などということになり、結局、あれやこれや処方されてもいつまでたっても治らないというケースが数多く出てきます。
 その点、漢方医学では病態の自然科学的な原因はあまり深く追求しません。患者さんの社会的環境やストレス、体力や体質、独特な身体所見などを総合的に分析しながら、証といわれる漢方医学的な診断をし、薬を処方します。例えば、一般的な西洋薬のかぜ薬は、解熱鎮痛剤と種々の対症的な配合成分で作られていて、多少の差はあれ画一的です。それゆえ、発熱が治まり体力が弱って、寒気が残るような状態でも、体を冷やす解熱鎮痛剤を飲み続けてしまうということが起こります。漢方薬では、患者さんの体力、体質、風邪(ふうじゃ)の病期により、症状を押さえ込むのか体をいたわるのか、冷やす時なのか暖める時なのか、それによって処方を変えていきます。効果の高い治療をしようとするなら、今日の朝昼はこれを飲んで、症状がこうなれば、その後はこれに変えて、明日からはこれをというように処方を変えていくこともあります。漢方薬が好きな医師は、自分が風邪をひきかけると、少し楽しげにいろいろな処方を試しては自分の体で検証していくという話もよく聞きますね。
 漢方治療を求めて来院される患者さんは、「他院で診断がつかない」、「いろんな薬を出されたが、どれも思うように効かない」、「体質や更年期だから仕方がないと言われた」、「鎮痛剤、精神安定剤などの西洋薬を飲み続けるのは嫌だ」といった訴えをよく口にされます。
 よく経験する、漢方薬が西洋薬治療を凌駕する例を挙げるとすれば、手足の痛みやしびれで整形外科に行ったが、リウマチではないと言われて痛み止めしかくれないないという方に越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)。慢性的に胃の調子が悪くて、胃薬を続けていた方に六君子湯(りっくんしとう)。慢性的な頭痛と吐き気で毎日のように鎮痛剤を飲み続けていた方には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)。長く続く咳や喉の違和感で耳鼻科に通院していた方には、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などがありますね。これらの処方は、短期間で患者さん自身さえ驚かれるような効果を見せることを、しばしば経験します。しかも、漢方薬の究極の治療結果として、廃薬という最終的に薬が切れても症状が落ち着いている状態に到るケースさえあります。こういった経験は、漢方薬の醍醐味とも言えるもので、それを味わって漢方の道に入っていく医師が多いと思います。

オーダーメードの診療を

 漢方の証を診断する過程では、患者さんの訴えや漢方医学的な身体所見の他に、具体的な仕事の内容、職場や家庭の環境、家族関係などの情報や、診察室での行動、元気さや雰囲気、話し方、声の調子、こちらが言ったことにどういう返すかとかなど、さまざまな情報を利用していきます。高名な先生の逸話では、患者さんが診察室に入ってきた瞬間に処方が決まることもよくあったなどということを聞きますね。それとはかけ離れたものですが、僕自身、漢方になじみのない先生から、「更年期障害には何がいいの?」とざっくり聞かれることがあります。そこで、例えば、色白でいかにも非力そうで静かな人なら当帰芍薬散。事細かに症状を手帳を書いて来る神経質そうな方は加味逍遥散。そこそこ以上の体力ありそうな人なら桂枝伏苓丸を、と説明します。意外にこれでなんとかなるもので、この3剤は婦人科の黄金処方と言われています。
 漢方を診療に取り入れた医師が、誰しも経験するちょっとした悩みもあります。僕は産婦人科医ですが、自院の患者さんからの紹介などで、頭痛、めまい、耳鳴り、腰痛、手足の痛みなどはもとより、皮膚や眼の症状などなど専門外の症状を主訴とした相談や、男性の相談などもよくあります。時には、なぜ婦人科へ?と聞きたくなる症例や、まったく経験のない症状に当惑することもありますね。当然、各科の専門医の診断・治療を受けてもらうのが第一ですが、その上で、いろいろな治験を調べたりしながら処方を試みたり、研究会などで知り合った他科の漢方医を薦めたりしています。とにかく、漢方治療は全人的医療の面が強く、一人の患者さん全体を多方面から見て、オーダーメードな感覚で証や処方を考えていくことが大切なのです。漢方薬には副作用がないわけではありませんが、西洋薬に比べると軽微です。ですから、西洋医学でどうにもならないなら、漢方薬でなんとかしようと試していけるのも、魅力と言えます。

生薬を扱えることが目標

 これまで偉そうなことを話してきましたが、僕などはまだまだメーカーが作ったエキス剤をあれこれと使っているだけの駆け出しです。つい先日も、有名な同じ年の先生の講演会に出席して、自分との差に大きなショックを受けてきたばかりです。漢方の勉強を深めていくには、難解な古典の勉強を深めていくことがどうしても必要だとわかりました。古典には、長い年月をかけて膨大な症例を積み上げてきた経験や理論が書かれています。僕などは、どうしても患者さんの症状に振り回され、証の見極めも甘く、薬をあれこれ変えたり、何種類も出したりして、結局、なかなかいい結果を得られないことがしばしばです。
 漢方治療では、証を見極め、なぜその生薬を使うのかという理論を再現性のある形で積み上げていかねばならないのですが、日常の診察の中では限界もあり、なかなか思うように記録や考察ができないのが悩みですね。 有名な先生方の講演や逸話では、患者さんの証によって処方を構成する個々の生薬を足したり抜いたりして、さらにオーダーメード性を高める話がよく出てきます。そうしていくと、やがてはひとつの処方のバリエーションが広がって、さほど沢山の種類の処方はいらなくなったというような話も聞きます。そんな大家でさえ、高齢になり死の直前でも、自らを道半ばまで達していないと言ったとのことです。到底、僕の限りある命の間には、その足元どころか影さえ見ることもできないでしょう。それでもなんとか少しずつでも勉強して、まずは、目標としてエキス剤だけでなく、煎じ薬などの生薬が扱える漢方医になっていきたいと思っています。

うえひらウィメンズクリニック

医院ホームページ:http://www.uwc.jp/goaisatu.html

箱崎駅より徒歩1分。駐車場もあり。車いすにも対応できる設備を備え、コーヒー、水の無料サーバーもある。クレジットカード決済も可能。詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

婦人科、産科、内科(漢方)

上平謙二(うえひら・けんじ)院長略歴
1985年 九州大学医学部卒業、同大学婦人科学産科学教室入局、松山赤十字病院、九州大学病院で研修
1987年 九州大学大学院医学研究科(第二病理学教室)進学
1991年 九州がんセンター婦人科勤務
1993年 国立別府病院 産婦人科に転任
1995年 九州大学病院 産婦人科助手に採用
1996年 北九州市立戸畑病院 産婦人科部長
1998年 医療法人愛和会古賀中央病院 婦人科医長
2006年5月 福岡市東区箱崎にうえひらウィメンズクリニック開業
■資格・役職

日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医、母体保護法指定医、日本東洋医学会会員

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