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皮フ科わくいクリニック 涌井史典院長

[外来訪問] 2013/10/02

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

西洋医学のみならず東洋医学を用いる治療を目指す

 父が医師だったので、小さいころから医者として働く父の背中を見ていました。夜、患者さんに呼ばれて病院に出かけていく父の姿を見ながら、大変な仕事だと思う反面、やりがいのある仕事なんだな、という気持ちをもったことが医師を目指したきっかけになっていると思います。父は内科医でしたが、私は「自分の目で見て、手でふれることで病気がわかる」ところにひかれ、皮膚科医を選びました。
 漢方に興味を持った理由は、私自身が幼いころから身近に漢方に接していたことと、大学の皮膚科で勉強していたとき、講師の先生がアトピー性皮膚炎の治療に漢方を処方しているのを拝見したことです。自分が外来診療を受け持つようになったとき、にきびの患者さんに漢方を処方し、効果がみられたこともきっかけになっていると思います。
 皮膚科の治療においては、西洋医学だけではなかなか治療成果が上がらない現実を感じていて、他に何か有効な治療法がないかと考えていました。アトピー性皮膚炎が専門でしたが、ステロイド剤を使わない治療法を目指しており、代替として漢方が大きな治療手段になるのではないかと思ったのです。
 大学病院をやめた後は、日本橋の上田診療所で皮膚科の診療にあたりながら、講演会や講習会に参加しながら漢方を学びました。そして2002年、「患者さんを第一に誠意をもって温かい医療をおこなう」「患者さんに受診してよかったと思ってもらえるような、納得のいく丁寧な診療と説明をする」を基本理念としたわくいクリニックを開業しました。

木の「葉」でなく「幹」を見ることで症状を改善

 クリニックでは、開業当初から漢方をベースとした治療をおこなってきました。診療のときは、患者さん全体を、自分の五感を使って診ることを心がけています。まずは湿疹などの皮膚症状を目で見て、手でふれて、脈もたしかめて、皮膚症状だけでなく、その人が発する気とか、空気感も感じる。「肩こりはありますか」「よく眠れていますか」など、患者さんに記入していただいた問診票を見ながら、たくさん話しを聞きます。その上で、皮膚症状や体の状態、心の状態、生活の様子などから総合的に判断して漢方薬を処方しています。
 勤務医だったころは、患者さんを診ているつもりでも、どうしても病気にばかり目が行ってしまうことがありました。皮膚科だったので、患者さんの皮膚ばかり見てしまいがちだったのですが、漢方を用いた治療をするようになって、患者さんの人となりを含めて全体を診て診察するようになってきたと思います。それによって、西洋医学では解決できないことが解決できることもある。それが、漢方のいちばんの魅力だと思っています。
 例えば、1本の木があったとします。1枚1枚の葉が病気の症状だとすると、西洋医学では、葉っぱしかみない。この症状にはこの薬、という考え方。これに対して東洋医学では、葉の症状は何からきているのか、と想像しながら木の幹を見るのです。
 患者さんがにきびで受診された。でも、診察してみたら、実は気力が落ちていて、すごく疲れている。「肩はこっていないですか?」「首は痛くないですか?」「食事の後におなかがもたれたりしませんか?」など、いくつか質問をし、どうやら胃腸が弱っていると診断します。そして胃腸の漢方を出すと、にきびも、肩のこりや首の痛みもよくなって、食欲が出て、よく眠れるようにもなって元気になる。そんなふうに、大元に効く薬を出すことで多くの不調がよくなることがあるのです。人間の体はみんなつながっているので、どこかが悪くなると、弱っているいろいろなところに症状が出るものなのです。

患者さんにしっかり理解してもらうことが大事

 一方で、漢方も万能ではありませんし、診察するときに医師の主観が強くなりすぎて、思い込みにとらわれてしまうと、判断を誤ってしまうことにつながるので注意が必要だと思います。
 漢方薬は種類が多く、170~180種類ある中から患者さんの状態に合う薬を選びます。もちろん、最初の処方で合う治療法が見つかることがベストで、そうするべく努力しているのですが、うまくいかないこともあります。とくにアトピー性皮膚炎の患者さんはつらい思いをされているので、薬が効かないと精神的にも追い込まれてしまうことがあります。そうなると私もなんとかしたいと追いつめられる。少しでも早く患者さんがよくなるよう最善の策を考えたいと思っているのですが、なかなか難しいこともあって、そういうときはこの仕事の大変さを感じますね。
 今は情報社会ですので、患者さんもさまざまな情報にふれていて、なかには漢方について正確ではない認識を持っている方もいらっしゃいます。例えば女性によく処方する、いわゆる生理不順などに効く漢方を男性に処方したりすると、「なんでこんな薬を出すんだ」と言われることもあります。しかし、漢方薬はひとつの薬にいくつもの生薬が含まれているので、同じ薬でも異なるさまざまな作用があるのです。生理不順に効く薬には、血のめぐりをよくしたり、イライラを鎮めたりする作用もある。夏痩せや食欲不振に効く薬には、汗を抑えたり、体内の余分な水分を外に出したり、胃腸の働きを上げたりする作用もある。ですから、処方する薬についての説明は丁寧にして、患者さんにしっかり理解してもらうようにしています。そうすると診察時間がどんどんのびてしまうのが悩みどころなのですが。治療効果をあげるためにも、患者さん自身にしっかり理解し、納得し、信用して使っていただくことが大切だと思っています。

よりよい治療のために他科との連携も

 今後の課題として、もっと勉強しなければと思います。知識があれば、さらに迅速に、より患者さんに合う治療ができますから。他にも、クリニックでおこなっていきたいことはたくさんあります。「エサを与えるだけではダメ。エサのとり方も教えることが必要」という言葉があります。診察して、診断して、説明して、漢方を処方する。でも、それだけではダメだと思うのです。例えば、冷え症対策のためのプリントを配布したり、ストレッチをすすめたり、食事のとり方をアドバイスしたりと、症状が悪くならないための生活上の注意や、体質改善、生活改善のためのケアも続けていきたいと思います。
 また、最近はストレスなど精神的な問題が誘因で皮膚の症状があらわれる方が増えています。診察室は、まさに現代社会そのものだなと感じることがあります。成人患者さんはもちろん、小さいお子さんも、思春期の方もいらっしゃいますが、親子関係、夫婦関係、家庭環境などが症状に深く関わっていると思います。
 精神的な問題を抱えている患者さんには、「ものの考え方や捉え方」を変えてみましょうとアドバイスしたり、プリントを配ったり、いろいろお話しもしています。それでも治療がうまくいかない場合は、同じ医師会でよく知っている精神科の先生がいるので、コンタクトをとり一緒に診ていくこともあります。お子さんの場合は、小児科の先生と連携していくこともあります。こういった他科との連携は、これからさらに密にしていきたいと思います。
東洋医学には漢方だけでなく、鍼灸や気功など、さまざまな手段があるので、うまく取り入れれば患者さんの治療に活かせるのではないかと考えています。個人的には今、呼吸法にとても興味があります。緊張するとどうしても人間の呼吸は浅くなるので、鼻からゆっくり吸ったり吐いたりする、気功や太極拳などの呼吸法も取り入れられたらよいかと思っています。

皮フ科わくいクリニック

医院ホームページ:http://wakui-clinic.com/

各線「高田馬場」駅より徒歩6分。
待合室にはたくさんの本や雑誌があり、掲示物も豊富なので待ち時間も退屈せず過ごせます。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

皮膚科

涌井史典(わくい・ふみのり)院長略歴
1989年 日本大学医学部卒業
1990年 日本大学医学部附属板橋病院
1996年 上田診療所
2002年 皮フ科わくいクリニック開設
■資格・所属学会他

医学博士、皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、東京都皮膚科医会、日本臨床漢方医会

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